CT使用負担と二次ケーブルVA計算の完全ガイド|5A・1A比較と実務事例

CT(変流器)負担容量と選定 受変電

はじめに:CTの使用負担と二次ケーブルの関係

変流器(CT)は一次側の大電流を小電流に変換し、安全に計測や保護に利用する重要機器です。CTの性能を最大限発揮するためには、定格負担容量の範囲内で使用することが不可欠です。定格負担を超えると、測定誤差の増大や保護継電器の誤動作など、設備の信頼性を損なう恐れがあります。CTの負担は、接続する計器の負担と二次ケーブルの負担の合計で決まりますが、特に長距離配線や断面積の小さいケーブルでは、二次ケーブルの抵抗によるVA負担が無視できません。現場では、このケーブル負担を過小評価してしまうケースが多く見られます。

また、高圧受電設備においては、過電流定数の確認も重要な要素となりますが、本記事では低圧負荷に取り付けるCTの使用負担に焦点を当てます。そのため、過電流定数に関する説明は割愛し、主に二次ケーブルが使用負担に与える影響と、その計算方法について解説します。さらに、5A二次と1A二次を用いた具体的な計算例を示し、設計段階での確認の重要性を明確にします。

CTの使用負担(VA)の基本概念

CTの「負担容量(VA)」とは、二次回路に接続された計器やケーブルなどがCTに与える電気的負担を表します。定格負担は、CTが精度を保てる最大負担を示し、通常は 5VA や 15VA などで規定されます。使用負担は、接続計器のVAと二次ケーブルのVAを合算して求めます。もし使用負担が定格負担を超えると、測定値に誤差が生じ、モータリレーなどの保護継電器の動作にも悪影響を及ぼしてしまいます。そのため、負担計算はCT選定や配線設計において必須の確認項目です。設計段階では計器の負担は確認しても、ケーブル負担を見落とすケースが多く、特に長距離ケーブルの場合には慎重な確認が求められます。具体的に見ていきましょう。

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二次ケーブルによるVA負担の計算方法

二次ケーブルの負担(VA)は、次の式で求めます。

VA = (I2) × (R )

ここでIは二次電流(A)、Rは接続する計器の定格負担とケーブルの往復抵抗(Ω)の合計です。接続計器の抵抗値は案外大したことはありません。例えば、トランスデューサ 0.5VA、広角度指示計 0.4VA 程度です。 重要なのは「ケーブルの往復抵抗」は、単位長あたりの抵抗値(Ω/km)と長さ(km)から計算します。

例えば、CVVおよびIVの2sq、1.25sqおける抵抗値の例です。

ケーブル種類公称断面積抵抗値(Ω/km)
CVV2sq約9.42
CVV1.25sq約16.8
IV2sq約9.24
IV1.25sq約16.5

計算では往復距離を考慮するため、例えば、コントロールセンタから現場盤までの片道が30mとすると往復抵抗は60mとして抵抗を求める必要性があります。次章では、5A二次と1A二次、それぞれの配線条件に基づく具体例を示します。

CT選定時の注意点と負担容量の確認方法

CT選定時には、計器の負担とケーブル負担を合算し、定格負担以内に収める必要があります。計器負担は仕様書で確認し、ケーブル負担は計算で求めます。5A二次CTはケーブル負担が大きくなりやすく、長距離配線では1A二次の採用を検討することが望ましいです。また、盤内配線も負担に含める必要があります。短い距離でも抵抗値は確実に加算されるため、計算を省略すると誤差の原因となります。特に既設設備の改修時には既存ケーブルの条件を正確に把握し、適合するCTに置き換えることが重要です。

ケーブル長さと断面積が負担に与える影響

長いケーブルや細い断面積のケーブルは抵抗値が大きく、結果としてVA負担も増えます。例えば5A二次で片道30mのCVV2sqを使用した場合、抵抗値は9.42Ω/km×0.03×2km≒0.57Ωとなります。この場合のVAは 52×0.57=14.25VA で、定格5VAのCTでは大きく超過してしまいます。仮に15VAとしても、内線も考慮すると心許ないです。一方、1A二次では同条件でもVAは 12×0.57=0.57VA となり、負担は大幅に減少します。また、断面積を大きくすると抵抗は低減しますが、施工コストや配線スペースも考慮が必要です。現場においては、盤外にCT二次を送る場合には 1A とすることが一般的です。

実務で使える計算例

例えば、以下のCT選定が正しいか計算式を用いて確認してみましょう。
CT(15VA)、盤内配線IV(2sq)往復6m、盤外配線CVV(2sq)片道30m、広角度指示計1台(0.4VA)

① 5A二次

1. ケーブル抵抗の計算

盤外CVV 2sq(片道30m → 往復60m)
\( R_{CVV} = 9.42 \Omega/km \times 0.06 km = 0.5652 \Omega \)

盤内IV 2sq(往復6m → 0.006 km)
\( R_{IV} = 9.24 \Omega/km \times 0.006 km = 0.05544 \Omega \)

合計抵抗
\( R_{total} = R_{CVV} + R_{IV} = 0.5652 + 0.05544 = 0.62064 \Omega \)

2. ケーブル負担VA

\( VA_{cable} = I^2 \times R = 5^2 \times 0.62064 = 15.516 VA \)

3. 総使用負担VA(計器込み)

\( VA_{total} = VA_{cable} + VA_{instrument} = 15.516 + 0.4 = 15.916 VA \)

4. 評価

CT定格15VAに対して総負担は \( 15.916 VA \) となり、わずかに定格を超過しています。5A二次では精度低下や誤動作のリスクがあるため、1A二次化やケーブル断面増加の検討が必要です。


②1A二次の場合

1. ケーブル抵抗の計算

盤外CVV 2sq(片道30m → 往復60m)
\( R_{CVV} = 9.42 \Omega/km \times 0.06 km = 0.5652 \Omega \)

盤内IV 2sq(往復6m → 0.006 km)
\( R_{IV} = 9.24 \Omega/km \times 0.006 km = 0.05544 \Omega \)

合計抵抗
\( R_{total} = R_{CVV} + R_{IV} = 0.5652 + 0.05544 = 0.62064 \Omega \)

2. ケーブル負担VA

\( VA_{cable} = I^2 \times R = 1^2 \times 0.62064 = 0.62064 VA \)

3. 総使用負担VA(計器込み)

\( VA_{total} = VA_{cable} + VA_{instrument} = 0.62064 + 0.4 = 1.02064 VA \)

4. 評価

CT定格15VAに対して総負担は \( 1.02 VA \) となり、余裕十分です。1A二次に変更すれば安全かつ精度を確保でき、長距離配線や計器追加にも対応可能です。

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実務で使える計算ツール・早見表の活用

現場ではメーカー提供のケーブル負担早見表や、Excel計算シートの活用が効率的です。早見表ではケーブル種類・断面積・距離ごとのVAが一覧で確認でき、設計ミス防止に役立ちます。また、スマホアプリを使えば現場で即座に負担計算が可能です。特に長距離配線や既設改修時には、既存ケーブル条件を入力してCTの適否を確認することで、精度低下や誤動作を未然に防げます。

まとめ

CTの使用負担は、計器と二次ケーブル負担の合計で決まり、長距離配線や5A二次では超過しやすいことが分かります。今回の例では1A二次にすることで負担を大幅に軽減でき、精度維持と誤動作防止につながります。設計段階での負担計算は、計測信頼性と安全性を確保する基本です。現場での迅速な確認には、早見表や計算ツールの活用を推奨します。

この記事を書いた人
T係長

30歳で制御設計の世界に飛び込み、未経験から10年以上にわたり、プラント設備の制御設計・更新・改造案件に携わってきました。これまで100件を超える現場経験を通じて、設計図面から制御盤、シーケンス制御、保護協調まで幅広い電気技術を磨いてきました。
保有資格は「第二種・第三種電気主任技術者」「第二種電気工事士」「基本情報技術者」。資格の枠にとらわれず、現場で困っている人を助けられる技術者であることを大切にしています。
このブログ「誠電気設計」では、初心者や若手エンジニアの方にもわかりやすく、実務に役立つ知識を共有しています。学びを通じて、読者とともに成長し続けることを目指しています。

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