【初心者必見!】リレー選定で失敗しないための基礎知識:接点容量、復帰障害対策のいろは

リレー選定 失敗しないための基礎知識 機械制御

はじめに

制御盤に必ず存在すると言っても過言ではないのが、補助継電器、いわゆる「リレー」です。リレーの選定は、システムの根幹にかかわる超重要事項でもあります。単に「電圧仕様を満たしている」という観点だけで選定を行うと、リレーの故障や障害を引き起こしてしまい、システム全体の信頼性を損なう危険性があります。

特に、制御回路設計の経験が浅いエンジニアにとって、リレーを単に「接点のON、OFF」だけでとらえてしまい、納入後の不具合に直面してしまう例が少なくないのです。T係長も実は、その一人でした。整理すると単純なのですが、私たちハード制御回路設計者が理解すべき重要課題は三点存在します。それは、負荷特性に適した接点容量の確保、動作安定性を脅かす復帰障害対策です。本記事を読めば、物理接点を持つリレーの選定が自分で、しっかりと根拠を持ってできるようになります。


リレーとは? その役割と基本構造

リレーの代表格であるオムロンのMY4Nなどに代表される補助継電器は、制御盤内で非常に多岐にわたる役割を担う汎用性の高い電気機器です。これは、制御回路からの小さな電気信号(コイルへの通電)を得て、複数の独立した接点を同時に開閉する(スイッチングする)機構を持っています。半導体のスイッチングによって動作するソリッドステートリレーに対して、「電磁リレー(メカニカルリレー)」と呼ぶこともあります。インターロックや自己保持、信号の中継・増幅、または複数の機器への同時信号伝達など、様々な制御を実現する上で必要不可欠な存在です。

ちなみに、オムロン製のMY4は「4つのc接点」、MY3は「3つのc接点」、MY2は「2つのc接点」を持つことを表します。富士電機製だと、HH54P、HH53P、HH52Pが同等品ですね。取付用ソケットの端子台の並びも同一ですので、使いやすいです。よく使用するので、エンジニアの多くの人々は自然と並びを覚えてしまっています。

電磁リレー(メカニカルリレー): 信頼の実績を持つスイッチ

電磁リレーは、コイルに電流を流すことで発生する電磁力を利用し、物理的な接点を開閉するタイプです。その信頼性の高さから、多くの制御回路で使用されています。オムロンのMYシリーズなどに代表される補助継電器がこれにあたります。最大の利点は、接点が物理的に接触するため、導通時のON抵抗が非常に低い(50mΩ程度)ことで、大電流や高電圧を扱う能力に優れています。また、AC負荷でもDC負荷でも、負荷の種類を選ばずに接点が使用できる汎用性の高さも大きな特徴です。ただし、コイルはAC用、DC用で異なるので注意してください。

しかし、接点には「機械的寿命」「電気的寿命」があり、開閉動作のたびにアークが発生して接点が消耗・摩耗するため、使用回数(頻度)が増えるほど寿命は短くなります。また、通常の使用の中で、それほど気にすることはないですが、物理的な動作に伴う、接点のチャタリング(跳ね返り)によるノイズの発生、およびスイッチング速度の限界が存在することも理解しておきましょう。

ソリッドステートリレー(SSR)

ソリッドステートリレー(SSR)は、物理的な可動接点を持たず、サイリスタ、トライアック、トランジスタといった半導体素子によって負荷電流を電子的にスイッチングするリレーです。この無接点構造こそが、SSRの最大の強みです。

理論上は半永久的な長寿命を実現しています。機械的な接点の摩耗がないため、特に頻繁な開閉(高頻度スイッチング)が要求される温度制御や流量制御などの用途で真価を発揮します。また、物理的な動作音も発生せず、チャタリングも原理的に存在しないため、ノイズレスで静かな動作が可能です。さらに、スイッチング速度も10ms以下と、メカニカルリレーの20msより遥かに高速です。

一方で、SSRは半導体素子を使用しているため。導通時にわずかながらON抵抗が存在します(100mΩ)、これにより発熱が生じます。そのため、微小な漏れ電流(オフセット電流)が発生する点、AC用とDC用で回路が異なり汎用性が低い点も、選定時の考慮事項となります。

簡単にソリッドステートリレーについても触れましたが、この記事では主にメカニカルリレーについて解説を行います。

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システムの信頼性を決める鍵:接点容量と寿命

リレー選定において最も重要なパラメーターが「接点容量」と「機械的・電気的寿命」です。この二つを誤ると、リレーの早期故障や回路の損傷につながります。

接点容量:リレー接点が扱える電流・電圧の限界

接点容量は、リレーの接点が安全かつ確実に開閉できる最大の電圧と電流の組み合わせを指します。カタログには通常、定格負荷として記載されています。そもそもこの接点には「シングル(単接点)」と「ツイン(双接点)」、より信頼性の高い「クロスバ・ツイン」の3種類があります。シーケンサに入れるなどの微小負荷要はツインやクロスバ・ツインが信頼性の点で有利です。通常の制御回路ではシングルで事足りることが多いです。

単純な定格電流の比較では危険!「負荷の種類」を考慮しよう

接点容量は、負荷の種類によって大きく変動します。「抵抗負荷」と「誘導負荷」の2つが主な分類です。カタログに「耐久性曲線」のようなものがあるので、しっかりと確認するようにしましょう。一般的にはDC24V回路よりもAC100V回路の方が電気的な寿命は長くなります。また、誘導負荷より抵抗負荷の方が電気的な寿命が長くなります。

MY4を例とすると、AC110V(1A)の抵抗負荷の動作回数は200万回、DC30V(1A)の抵抗負荷は70万回、AC110V(1A)の誘導負荷の動作回数は40万回、DC30V(1A)の抵抗負荷は30万回程度です。「DC24Vの方が電圧が小さいのに、何故?」と思うかもしれませんが、DCとは異なり、ACは零点となるところができるので、遮断しやすく、寿命が延びるのです。


負荷の種類
特徴(ストレスの大きさ)具体的な機器選定の着眼点
抵抗負荷 (R負荷)投入/遮断電流が定常電流とほぼ同じ。最もストレスが小さい。ヒータ
電熱器
白熱灯
定格電流を基準に選定。
誘導負荷 (L負荷)投入時は定常電流、遮断時に大きな逆起電力(サージ電圧)が発生。接点アークの原因。モータ
ソレノイド
電磁弁
定格電流より余裕を持たせる。

リレーの寿命:電気的寿命と機械的寿命

リレーの信頼性を評価する上で、その寿命を理解することは極めて重要です。リレーの寿命は、大きく分けて電気的寿命機械的寿命の二種類が存在し、これらは異なるメカニズムでリレーの動作限界を定めます。

まず、電気的寿命は、リレーが実際に負荷電流を開閉できる回数の上限を示します。これは、接点が開閉する瞬間に発生するアーク(火花)によって接点表面が消耗・摩耗し、最終的に接触不良や溶着といった故障に至るまでの動作回数として定義されます。この寿命は、負荷電流の大きさ負荷の種類(抵抗負荷、誘導負荷など)に大きく依存します。特に誘導負荷の遮断時や容量負荷の投入時には大きなストレスがかかるため、定格負荷を少しでも超えると、寿命はカタログの基準値から急激に短縮します。必ず耐久性曲線を確認するようにしましょう。

次に、機械的寿命は、コイルや可動接点を動作させる駆動機構の物理的な耐久性を示します。これは負荷電流が流れていない状態、すなわち無負荷での開閉動作において、ばねの疲労や可動部の摩耗によってリレーが動作不能になるまでの回数です。一般的に機械的寿命は数千万回と非常に長く設定されています。

実際の制御回路設計において、リレーの交換時期や信頼性を決定づけるのは、通常、より短命な電気的寿命です。コンタクタをONさせる回路は電流値が大きくなりがちですので、注意が必要です。T係長はかつて、「すぐリレーが不良になる」というクレームを受けたことがあります。調べてみると、AC100V回路のコンタクタをONさせる回路で、1.5A程度が流れる回路でしたが、ここにMY4Nの接点を使用していたのです。この条件下でのMY4Nの電気的寿命は20万回です。この接点は1時間で300回程度ON/OFFする信号でした。つまり、1カ月で 300(回)x24(時間)x30(日)= 21.6(万回) ですから、約1カ月で壊れる計算です。お客様のクレームはもっともです。本来は、このような高頻度の開閉を行うのであれば、ソリッドステートリレーを用いるなどの対策が必要でした。


リレーの復帰障害:原因と対応策

リレー選定と並んで、運用上で特に注意が必要なのが「復帰障害」です。リレーはON(動作)するだけでなく、OFF(復帰)することも重要です。制御信号をOFFにしたにもかかわらず、リレーがON状態から復帰しない(接点が開かない)状態を復帰障害と呼びます。

復帰障害の主な原因

接点溶着

最も一般的な原因は接点溶着です。これは、リレーの開閉時に生じるアーク熱や、LEDランプなどの負荷を投入する際に流れる大きな突入電流の熱によって、接点表面の一部が溶け、固着してしまう現象です。この溶着が発生すると、リレーは意図せずON状態を維持し続けます。ちなみに、物理接点を持たないソリッドステートリレー(SSR)の場合、溶着は起こりませんが、内部の半導体スイッチング素子が短絡モード(ON状態)で故障することがあり、これも結果的に復帰障害と同様の制御不能状態を引き起こします。接点溶着を防ぐためには、負荷の種類に適した容量選定が不可欠なのです。

浮遊静電容量による充電電流

制御盤の配線やケーブルには、導体と大地(グランド)間にわずかな浮遊静電容量が存在します。通常、この容量は無視できるほど小さいですが、長距離の配線や、AC200Vなどの高い電圧回路において問題を引き起こすことがあります。

具体的には、リレーのコイルへの電源がOFFになった際、この浮遊静電容量を通じて微小な漏れ電流がリレーのコイルに流れ続ける現象が発生します。この電流は、リレーを完全にON状態に保つには不十分ですが、コイルの復帰電圧(リレーが確実にOFFになる電圧)を下回らない程度の電圧を誘起し、リレーがOFFにならない状態となるのです。

富士電機のカタログによると、HH54(50Hz/AC100V)だと許容電線亘長は85m、HH54(50Hz/AC200V)だと許容電線亘長は21mとされています。「亘長」は電線路(ケーブルや電線)を敷設するルートの長さを示す専門用語です(片道分)。

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復帰障害への対応策と予防法

原因復帰障害への対応策 (発生後)予防策 (設計時)
接点溶着故障リレーを交換する。接点溶着が続く場合は、負荷側回路を確認する。定格負荷に大きな余裕を持たせる(特に突入電流に注意する)。
浮遊静電容量充電電流が分散し、復帰電圧を下回るように並列にリレーを設置する。ケーブルの敷設ルートを短くなるように、もしくは地中ではなく地上のケーブルラックに敷設する。

まとめ:リレー選定は「接点容量」と「寿命」の適切な設計から

本記事を通じて、制御回路の基本部品である電磁リレー(補助継電器)の選定が、単なるON/OFFの機能確認に留まらない、複雑な負荷特性と耐久性の設計であることをご理解いただけたはずです。

改めて強調したいのは、リレーの信頼性は「電気的寿命」によって決定づけられるという点です。MY4Nの事例が示す通り、負荷の種類(抵抗負荷か誘導負荷か)と開閉頻度を無視すると、カタログの耐久性曲線から大幅に寿命が短くなり、システム異常の原因となります。特に、DC負荷はAC負荷よりアークを遮断しにくいため、低電圧であっても寿命が短くなる傾向にあります。

また、安定稼働を脅かす復帰障害への対策も重要です。接点溶着には突入電流を考慮した大容量選定が必要です。そして、長距離配線で顕在化する浮遊静電容量による復帰不良は、リレーコイルに流れ込む漏れ電流のバイパス許容亘長の厳守といった、配線設計レベルでの対策が求められます。

メカニカルリレーを使う場合には、カタログやデータシートを読み解き、「負荷電流」、「動作回数」、「負荷種別」の三要素から最適なリレーを根拠をもって選定できるエンジニアを目指しましょう!

この記事を書いた人
T係長

30歳で制御設計の世界に飛び込み、未経験から10年以上にわたり、プラント設備の制御設計・更新・改造案件に携わってきました。これまで100件を超える現場経験を通じて、設計図面から制御盤、シーケンス制御、保護協調まで幅広い電気技術を磨いてきました。
保有資格は「第二種・第三種電気主任技術者」「第二種電気工事士」「基本情報技術者」。資格の枠にとらわれず、現場で困っている人を助けられる技術者であることを大切にしています。
このブログ「誠電気設計」では、初心者や若手エンジニアの方にもわかりやすく、実務に役立つ知識を共有しています。学びを通じて、読者とともに成長し続けることを目指しています。

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