コンドルファ始動の落とし穴|高圧モータ始動時の過電圧対策とよくあるミスを解説

コンドルファ始動のメリットと実務の落とし穴 機械制御

コンドルファ始動:大容量モータのやさしい始動法

大容量のモータを始動する際、電力系統に与える影響をいかに抑えるかは、電気設備を扱う上で極めて重要な課題です。始動時に流れる大きな突入電流は、電力系統の電圧を大きく低下させ、他の需要家設備や、構内の機器の動作に支障をきたす可能性があります。これを解決する始動方式の一つが、「コンドルファ始動方式」です。この方式は、大容量のモータに広く採用されており、その仕組みを理解することは、電気技術者にとって欠かせない知識と言えるでしょう。今回は、その基本的な原理と、なぜコンドルファ始動が有効なのかをわかりやすく解説していきます。

コンドルファ始動の結線図

始動時にスター結線された巻線の各相にコンドルファ(始動用変圧器)を挿入することがその核心です。このリアクトルが持つ誘導性リアクタンスによって、電流の流れを制限する効果が生まれます。これにより、始動時の大きな突入電流を抑制し、安定した始動を可能にします。電流を制限しつつ、始動に必要なトルクを確保できるのがこの方式の大きなメリットです。その後、回転速度が重武運に上がったら、デルタ結線に切り替えます。

88と6のVCSがON
88と6のVCSがON
6のVCSがOFFし、42のVCSがON
6のVCSがOFFし、42のVCSがON

使用するコンドルファは「タップ値」により、始動時に全電圧の何パーセントの電圧を印加するかを選択できます。標準タップは電気計器では 50-65-80%、電光工業では 65-80% です(特殊タップ品も製作可能です)。リアクトル始動ではタップ値と電流値の限流効果は同様でしたが、コンドルファ始動では電流も電圧の2乗に比例して低下します。65%タップを選べば42%の始動電流となります。大きな電流抑制効果が期待できます。

一方で、トルクはそれなりに確保できます。前提として、始動トルクは電圧の2乗に比例して低下します。コンドルファ始動では上記のタップ値の2乗ですので、65%タップを選べば42%のトルクが得られます。一方で、スターデルタでは印加電圧が \(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}\) となりますので、始動トルクは \(\displaystyle\frac{1}{3}\) = 33 % となります。コンドルファ始動では80%タップも選べますから、トルク確保の点で大きなメリットがあることがお分かりいただけるでしょう。

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コンドルファ始動の適応負荷

コンドルファ始動が適用されるモータの容量は、様々です。一口に「大容量」と言っても、電圧階級によって異なりますが、一般的な例を記載します。

高圧 6.6kV 級

6.6kVの高圧モータの場合、90kW から 1 000kW 程度の容量にコンドルファ始動が適用されることが多いです。この範囲のモータは、全電圧始動では電力系統に大きな影響を与えるため、何らかの始動電流抑制策が必要です。電力会社からの要請もあるでしょう。

低圧 400V 級

400V級のモータでは、90kW から 500kW 程度の容量に適用されることがあります。この電圧・容量帯では、設備容量 50kW を超えるため、高圧受電が基本ですので、受変電変圧器への影響を抑えるための措置となります。

低圧 200V 級

200V級のモータでは、100kW から 200kW 程度の容量が目安となります。低圧のモータとしてはかなり大容量の部類に入ります。200kW の場合、単純計算で 1000A が流れますので、それだけ電圧降下も大きくなりますので、コンドルファ始動の採用は有効な手段と言えます。


現場でよくあるミスとその対策

コンドルファ始動方式は信頼性の高い方式ですが、現場ではいくつかのミスや見落としが発生することがあります。これらのミスは、機器の故障やシステム全体のトラブルにつながる可能性があるため、特に注意が必要です。特に、設計段階や施工、メンテナンス段階での確認が重要となります。

1. コンドルファの時間定格選定ミス

現場で最もよくあるミスの一つが、コンドルファの時間定格選定ミスです。メーカーカタログには「時間定格」が記載されています。コンドルファの時間定格選定ミスは、モータが始動に失敗し、コンドルファが過熱・焼損するという重大な問題を引き起こします。これは、コンドルファの時間定格がモータの始動時間を下回っている場合に発生します。

コンドルファの時間定格とは、コンドルファが過熱せずに電流を流し続けられる時間を定めたものです。リアクトルは、通常運転時には使われず、モータを始動する間だけ電流が流れます。この短時間だけ流れる電流に耐えられるように、リアクトルには「0.5分定格」、「1分定格」、「3分定格」といった時間定格が設定されています。

モータのトルク-速度特性曲線と負荷の特性曲線を見比べ、始動トルクに十分な余裕があることと、その時間を確認することが必要です。基本的には連続2回始動が可能な時間を選定します。例えば、始動時間が15秒であれば、15秒の2倍で30秒以上の時間定格のリアクトルを選びます。少し余裕が欲しいので、この場合には「1分定格」が良いでしょう。

2. 始動時間の調整ミス

二つ目のミスは、コンドルファをバイパスする始動時間の調整ミスです。切り替えまでの時間が短すぎると、モータの回転速度がまだ十分でないうちに全電圧が印加され、依然として大きな始動電流が発生してしまいます。これは、電力系統に大きな電圧降下を引き起こす原因となります。逆に切り替えまでの時間が長すぎると、リアクトルやモータに熱的なストレスを与え、機器の劣化や損傷に繋がります。

この始動時間は、タイマーリレーなどを使って調整しますが、モータの特性に合わせて、現場で微調整を行う必要があります。モータの電流値が安定したところで切り替えるように調整します。始動時の電流変化を計測し、最適なタイミングを探りましょう。

3. 保護協調の考慮不足

三つ目の注意点は、保護協調の考慮不足です。コンドルファ始動を用いるモータは負荷容量が大きくなることも多く、その場合には、モータリレーと受電の過電流継電器(OCR)との協調を取る必要性が出てきます。始動電流で受電の保護継電器が動作しないようにするだけではなく、モータリレーの動作の方が保護継電器よりも先に動作しなければなりません。特に、始動時間が長くなる時に協調が取れなくなることがあります。

事前に電気主任技術者に確認しましょう。既設のモータの更新で、電流値が大きく、始動時間も長くなってしまい、どうしても保護協調が取れなくなってしまった事例があります。保護継電器の設定を変更してもらうしかないのですが、現地納入直前に気づいたので、かなりどたばたしました。現地入りの3カ月前には一度確認しておくことをおススメします。

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高圧コンドルファ始動の特有の注意点と対策

コンドルファ始動は高圧でも多く用いられますが、その場合には特有の注意点があります。特に、コンドルファをバイパスする際に使用する真空遮断器(VCS)の耐電圧と、中性点開放電圧への対策が重要になります。

VCSの耐電圧問題

コンドルファ始動では、始動電流を抑制するためにコンドルファを介してモータに電圧を印加します。モータが加速し、コンドルファが短絡される切り替え時には、スター結線とするための 6(VCS) に大きな過電圧(20kV相当)が発生します。これは 6.6kV 定格をはるかに越えます。この高い電圧に耐えられるVCSを選定する必要があります。富士電機カタログに「使用不可」記載があったのを記憶しています。一方で、三菱電機カタログでは「条件付き使用可」でした。その条件が次の項目です。

そんなことを考えずに敢えて VCB を使用するなんて方法もあるようですが、VCSの開閉回数は25万回、一方VCBの開閉回数は1万回です。モータの起動頻度によってはVCBを適切に保守し、機器交換計画を立てる必要性があります。

中性点開放電圧対策

コンドルファ始動方式は、始動時にモータの中性点が開放された状態になり、上述の20kVに相当する大きな中性点開放電圧が発生し、モータの絶縁にストレスを与える可能性があります。この問題を防ぐため、コンドルファを電気計器で製作している中性点開放電圧対策品コンドルファを採用することが推奨されます。この対策品を使用することで、三菱電機VCSを切り替えVCS(6)を用いることが可能です。


まとめ:コンドルファ始動方式の未来と展望

ここまでコンドルファ始動の基本、メリット、よくあるミスについて解説してきました。コンドルファ始動は、そのシンプルさと高い信頼性から、長年にわたって大容量モータの始動方式として重要な位置を占めてきました。しかし、近年では、省エネルギーや高性能化の観点から、インバータによる始動・速度制御が注目を集めています。インバータは、始動電流の抑制だけでなく、運転中の速度を自由に制御できるため、更なる省エネルギー化が期待できます。

それでも、コンドルファ始動方式がすぐに廃れるわけではありません。実際には現場では、インバータを常用として使用し、故障時バックアップ用としてコンドルファ始動を使用し、切り替えるような構成にしているところも少なくありません。

インバータは、初期コストが高く、複雑な制御回路が必要です。また、使用環境によっては、高調波対策が必要になる場合もあります。一方、コンドルファ始動方式は、シンプルで堅牢、そして比較的安価に導入できるという大きなメリットがあります。特に、速度制御が不要で、単純な始動と停止を繰り返すような用途においては、今後も有効な選択肢であり続けるでしょう。

電気技術の進化は目覚ましいものがありますが、コンドルファ始動方式のように古くから使われている技術も、その確かな信頼性とシンプルさから、これからも私たちの生活や産業を支え続けていくはずです。新しい技術と従来の技術、それぞれの特性と注意点を理解し、モータの用途やコスト、求められる性能に合わせて適切に使い分けることが、これからのエンジニアに求められる重要なスキルです。

この記事を書いた人
T係長

30歳で制御設計の世界に飛び込み、未経験から10年以上にわたり、プラント設備の制御設計・更新・改造案件に携わってきました。これまで100件を超える現場経験を通じて、設計図面から制御盤、シーケンス制御、保護協調まで幅広い電気技術を磨いてきました。
保有資格は「第二種・第三種電気主任技術者」「第二種電気工事士」「基本情報技術者」。資格の枠にとらわれず、現場で困っている人を助けられる技術者であることを大切にしています。
このブログ「誠電気設計」では、初心者や若手エンジニアの方にもわかりやすく、実務に役立つ知識を共有しています。学びを通じて、読者とともに成長し続けることを目指しています。

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