はじめに
電験二種における「電力・管理」科目は、単なる公式の暗記だけでは合格が困難な分野です。電力系統全体の構造、保護・制御の仕組みを深く理解しなければ、論述問題や複雑な計算問題に対応できません。特に論述問題ではただキーワードを繋げただけでは合格には決して届きません。では、どんな書籍で学べばよいでしょうか。T係長のおススメは、オーム社の『電力系統(第2版)』です。電力・管理分野の根底に流れる思想をしっかりと理解するための骨太の解説が魅力です。このブログでは、その特徴と、電験二種受験者がこの書籍を最大限に活用するための最適なタイミングについて解説します。
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書籍基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書名 | 電力系統(第2版) |
| 著者 | 前田 隆文(まえだ たかふみ) |
| 出版社 | オーム社 |
| 発売日 | 2023年11月27日 |
| 定価(本体+税) | 下記リンクよりご確認ください |
| 判型 | A5 判 |
| ページ数 | 416ページ |
| ISBN | ISBN-13: 978-4-274-23127-8 ISBN-10: 4274231275 |
- 電験二種、一種の記述対策にも十分!
- 電力系統理解の決定版、待望の第2版!
本書の概要と電験二種における重要性
メリット
『電力系統(第2版)』は、電験二種や電気系のエンジニアにとって非常に価値のある書籍です。最大のメリットは、電力系統工学の全体像を体系的に理解できる点にあります。この本は、単に試験に出る公式や計算問題を羅列するのではなく、電力系統がどのような構成要素で成り立っているか、平常時と異常時にどのような挙動を示すのかを、順を追って丁寧に解説しています。これにより、個別の知識がばらばらに散らばるのではなく、すべてが繋がった一つのシステムとして頭に入ります。
特に評価できるのは、豊富な図や模式図による解説です。電力系統は抽象的な概念が多く、数式だけでは理解しにくい部分が多々あります。しかし、本書は送電線の電圧降下、短絡・地絡時の電流の流れ、保護継電器の動作原理などを、視覚的に分かりやすく示しています。この「見える化」のおかげで、なぜその計算式が成り立つのか、その現象が実際にどういう意味を持つのかが直感的に把握できます。これは、独学で学ぶ人にとって非常に大きな助けとなります。
また、実務的な視点が含まれていることも重要なメリットです。この本は、単なる試験対策に留まらず、実際の電力設備や運用に関わる内容にも触れています。たとえば、周波数や電圧の制御、電力系統の安定度といったテーマは、試験問題としても出題されますが、同時に実際の電力会社やプラント設計において不可欠な知識です。T係長としては、第7章3項「電圧安定性と対策」は、これまでなんとなく言葉でしか理解していなかった部分を、式で明快に説明してくれている点が非常に参考になりました。本書を通じて、試験勉強がそのまま将来の仕事に活かせるというモチベーションに繋がります。
さらに、T係長を含め、初学者の多くの人がつまずきやすいポイントを熟知しており、その部分を重点的に、かつ丁寧に解説しているため、読者が抱くであろう疑問を先回りして解消してくれる構成になっています。このように、深い理解を促し、知識を実用的なものに昇華させてくれるのが、この書籍の最大の強みと言えるでしょう。
デメリット
『電力系統(第2版)』は非常に優れた書籍であることは前述のとおりですが、いくつかのデメリットも存在します。まず、電験三種受験者にとっては難易度が高いという点です。本書は、三相交流や複素数計算といった、ある程度の電気数学や回路理論の基礎知識を前提として書かれています。そのため、三種試験の学習初期段階にある方が、いきなりこの本を手に取ると、内容が難解すぎて挫折してしまう可能性があります。特に、三種では出題されない保護協調や詳細な安定度論といったテーマも含まれており、学習の優先順位が低い内容に時間を費やしてしまうことにもなりかねません。
次に、試験対策に特化していないという点も挙げられます。本書は電力系統工学の教科書として非常に優れていますが、問題演習や過去問の解説は含まれていません。そのため、本書を読んだだけでは、実際の試験でどのような形で知識が問われるのかを把握することが難しいです。合格を目指すためには、別途、過去問題集などを購入し、本書で学んだ知識を問題に応用する練習が必須となります。効率だけを重視し、最短で合格したいと考える受験生にとっては、一部の章が冗長に感じられるかもしれません。
また、価格が高めであることもデメリットの一つです。多くの電験参考書に比べて定価が高いため、他の基礎的な参考書や問題集と併せて購入する場合、それなりの費用がかかります。特に、独学で費用を抑えたいと考えている受験生にとっては、購入をためらう要因になるかもしれません。さらに、2023年刊行とはいえ、電力系統の運用は日々変化しており、最新のスマートグリッド技術や再生可能エネルギーの連系に関する詳細な記述は、教科書の性質上、限定的です。そのため、最新のトレンドや技術動向については、別の情報源で補う必要があります。これらのデメリットを理解した上で、自身の学習段階に合わせて活用することが重要です。
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読むべきタイミング:段階的な活用法
この書籍を効果的に利用するためには、受験者の学習段階に応じたアプローチが重要です。三種合格前は、三相回路や複素数計算といった電気数学の基礎が未熟なため、本書を読み進めるのは推奨しません。まずは三種試験範囲の基礎を固め、数学的素養と回路理論の感覚を習得することが先決です。
一方で、電験三種に合格し、基礎知識がある段階で本書を手に取るのが最も効果的です。電力・管理科目の学習を開始する際、本書を「基礎と応用の橋渡しテキスト」として位置づけます。試験範囲として頻出である、系統構成、送配電の特性、周波数/電圧制御、短絡事故、保護概論といった該当章を丁寧に読み込むのが良いでしょう。図をノートに写し、その物理的な意味を理解することで、単なる公式の暗記から本質的な理解へと学習の質を高めることができます。原則的には、試験合格までに5周以上読み込むことが理想だとT係長は考えております。その観点では、いきなり全てを理解しようとする必要はありません。1、2周目は計算式のあたりは読み飛ばしてしまって構いません。3周目以降に、覚えた知識を補足する形で、計算式の理解も深めましょう。
電験の二次試験は、計算結果だけでなく、その過程と判断の論理性が問われます。本書の図解と解説は、答案の書き方を練る上で非常に有効です。短絡・地絡の解析で系統をどのようにモデル化するか、保護協調の考え方をどう整理して答案に落とし込むかといった、実務的かつ応用的な視点を取り入れることができます。この視点を持てるレベルに至った時点で本書を活用することで、二次試験の記述問題で高い評価を得られる説得力のある答案作成能力が養われます。
「電力系統(第2版)」は電気エンジニアにとって、間違いなく良書と言えるでしょう。ご興味のある方はぜひ一度お手にとってご覧ください。
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- 電力系統理解の決定版、待望の第2版!
まとめ
『電力系統(第2版)』は電験二種を目指す受験者にとって、学習を一段階深めるための決定的な一冊といえるでしょう。本書は単なる知識の羅列ではなく、系統の全体像を理解させ、論述力を磨く助けとなる点は、他の参考書にはない強みです。もちろん、学習初期に取り組むには難易度が高く、また試験に直結しない部分も含まれているため、三種合格後にじっくりと腰を据えて取り組むのが最適です。
最初は難しく感じても、繰り返し読み込むことで徐々に理解が深まり、最終的には二次試験で必要とされる論理的思考力へと結実します。電験二種は暗記だけでは突破できない試験であり、根拠を持って答えを導く力が不可欠です。その力を養ううえで、本書は確かな指針となるでしょう。これから電験二種に挑む皆さんにとって、『電力系統(第2版)』は、合格、ひいては電気エンジニアとしての道筋をより確かなものにしてくれるはずです。


