【現場のトラブル解決】61Fの仕組みと正しい使い方|フロートレスリレーの点検方法

フロートレスリレー61Fの仕組みと保守点検 計装

はじめに

工場やプラントの設備管理において、水位制御に欠かせないのが、オムロン製のフロートレスリレー(通称、61F)です。これは、水槽やピットの液面を自動で監視・制御するための重要な装置です。電極棒を液体に浸し、その導電性を利用してリレーを動作させます。これにより、ポンプの自動運転や、異常水位を知らせる警報を発することが可能になります。シンプルながらも非常に堅牢で、信頼性が高く、多くの現場で長年にわたり使用されてきた定番品です。

この記事では、61Fの基本的な動作から、現場で役立つ故障診断と点検のノウハウまで、網羅的に解説します。長年この機器に携わってきた電気技術者の視点から、故障の兆候やその対処法を分かりやすくお伝えします。この記事を読んでいただければ、初めて61Fに触れる方でも、現場でのトラブルに自信を持って対応できるようになるでしょう。トラブルが発生した際に、どの部分をどのように確認すれば良いか、その具体的な手順を解説します。日々の業務にお役立てください。

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電極61Fの基本構造と水位制御の仕組み

61Fは、液面制御盤の心臓部ともいえる存在です。その基本原理は、電極棒の間に電流が流れるかどうかを検知することにあります。このシンプルな仕組みが、ポンプの空運転防止やオーバーフロー対策に絶大な効果を発揮します。私たちの生活を支える上下水道施設から、製造ラインの液体供給システムまで、幅広い分野で活躍しています。

電極棒と水導電性を利用した検出原理

61Fの仕組みは、水の導電性を利用したものです。水は微量のイオンや不純物を含んでいるため、電気を通す性質を持っています。この性質を利用し、水槽に設置した電極棒と、61F本体を組み合わせて水位を検出します。具体的には、リレー本体から電極棒に微弱な交流電圧を印加し、水が電極棒に触れると回路が閉じて電流が流れます。この電流をリレーが検知し、水位が所定の位置に達したと判断するのです。直流ではなく交流電圧を使用する理由は、電極の電食を防ぐためです。

この電極棒は通常、検知したい水位の個数 + 1本 で構成されます。最も長い電極棒は共通電極(E1)で、水槽の底近くに設置します。その他上限位置や下限位置、ポンプ2台目運転水位など、必要なところに、それぞれ電極を配置します。

電極棒と61F

フロートスイッチとの違い

水位制御には、ここで紹介している61Fのようなフロートレスリレー以外にも、フロートスイッチという浮き玉を使った機械式スイッチもよく使われます。現場でよく聞く「フリクト」はフロートスイッチの一種です。このフロートスイッチは、浮き玉の動きで内部のスイッチがON/OFFする仕組みです。これに対し、フロートレスリレーは電気的な信号で制御するため、浮遊物や水流による影響を受けにくく、より安定した動作が期待できます。また、フロートレスリレーは水槽内の電極棒の設置位置を変えるだけで、簡単に水位の設定を変更できる柔軟性も持ち合わせています。これらの点が現場で61Fが選ばれる大きな理由です。

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61Fの配線方法と設置のポイント

標準的な配線図の解説

オムロン製61Fの配線は、基本的な型番であれば比較的シンプルです。リレー本体には、電源端子(P1, P2)、電極接続端子、そして制御出力端子c接点(a接点 + b接点)x2 があります。まず、電源端子にAC100VまたはAC200Vの電源を接続します。次に、電極棒からの配線を、E1、E2、E3の各端子に接続します。最後に、ポンプや電磁弁などの制御したい機器を、リレーの出力接点に接続します。

電極棒の長さと設置位置の考え方

電極棒は、それぞれ役割に応じた長さと設置位置が重要です。共通電極は最も長くし、常に水に浸かっている状態に設定します。低水位電極は、ポンプが停止してほしい水位よりわずかに上に、高水位電極は、ポンプが動いてほしい水位よりわずかに上に設置します。この設置間隔が、ポンプの動作間隔を決定します。この間隔が狭すぎるとポンプのON/OFFが頻繁になり、モーターの寿命を縮める原因になります。逆に、広すぎると十分な容量を活用できません。適切な間隔を現場にて設定することが、設備の安定稼働につながります。

誤動作を防ぐための施工上の注意点

現場での施工には、いくつかの注意点があります。まず、電極棒の配線は、他の動力線などから十分に離して敷設しましょう。近くに動力線があると、電磁誘導によってノイズが乗り、誤動作の原因になることがあります。また、電極棒はしっかりと固定し、揺れたり接触したりしないように注意します。電極棒の絶縁被覆を剥く際は、必要以上に長く剥きすぎないようにしましょう。水槽が金属製の場合、水槽自体をアースに接続し、E1電極として使用できることも覚えておくと便利です。これらの点を守ることで、安定した水位制御を実現できます。


水位制御における61Fのメリットと限界

高信頼性と長寿命が評価される理由

61Fが多くの現場で使われる最大の理由は、その高い信頼性長寿命にあります。リレー本体は、長年の実績と改良が重ねられており、過酷な環境下でも安定して動作します。内部のリレー部品も高品質なものが使われており、頻繁なON/OFFにも耐える設計です。さらに、電極式は可動部が少なく、機械的な摩耗がないため、故障リスクが低いという利点があります。これにより、メンテナンスの手間が減り、設備の稼働率向上に貢献します。一度設置すれば、長期間にわたって安心して使えることが、プロに選ばれる理由です。

導電率が低い水での使用制限

しかし、61Fにも限界があります。その一つが、導電率が低い水での使用です。61Fは水の導電性を利用するため、純水や蒸留水のように不純物が極めて少ない液体では、電気が流れにくく、誤検出や検出不能となることがあります。一般的な工業用水や汚水では問題なく使用できますが、もし純水のような特殊な液体を制御する場合は、61Fの高感度タイプを選定するか、他の方式のセンサーを検討する必要があります。事前に制御対象の液体の導電率を把握しておくことが重要です。

補足ですが、テスタで計測して5kΩ~50kΩ程度であれば問題ないでしょう。一方で、純水などは1MΩ以上のため、フロートレスリレーでの水位や液位の検出には不向きです。

定期的な点検が必要な背景

61Fは非常に信頼性が高い機器ですが、定期的な点検は欠かせません。特に、電極棒は常に液体に浸かっているため、水質によってはスケールやスラッジが付着し、導電性が悪くなることがあります。この汚れが誤動作の原因となることが非常に多いです。見つけたら定期的に清掃するぐらいしか対応方法はありません。

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故障診断でよくある症状と原因

ポンプが停止しない/空運転してしまう

この症状は、給水・排水制御で最も頻繁に発生するトラブルの一つです。原因として最も多いのは、低水位電極の汚れや断線です。電極にスケールやスラッジが厚く付着すると、電気が流れず、リレーがON状態のままになってしまいます。また、電極棒が曲がったり、配線が切れたりしている場合も同様の症状を引き起こします。まず、制御盤の電源を切った上で、電極棒を目視で確認し、汚れや損傷がないかをチェックしましょう。

電極が検出しない/誤検出が多い

次に多いのが、水位の変化を正確に検出できないケースです。これも主に電極棒の汚れが原因です。特に汚水や高濃度の液体では、電極棒の表面に膜が張り、感度が大幅に低下します。また、水中に浮遊する泡や油などが電極棒に付着し、誤った通電を引き起こすこともあります。この場合、高水位電極が水に浸かっていないのに、リレーがONになるなどの誤動作が見られます。感度調整ダイヤルが正しく設定されていないことも、原因の一つです。まずは電極の清掃と感度調整を試みましょう。

リレーが動作しない/チャタリングが発生

電極棒に問題がないのに、61F本体のリレーが動かない、あるいは頻繁にON/OFFを繰り返すチャタリングが発生する場合は、リレー本体に問題がある可能性があります。長年の使用により、リレー接点が摩耗して接触不良を起こしていることが考えられます。また、外部からのノイズや、本体内部の電子部品の劣化も原因となり得ます。チャタリングは、リレーの寿命を著しく縮めるため、早急な対策が必要です。このような場合は、電極棒ではなく本体の交換を検討する段階に入っていると言えるでしょう。


現場でできる基本的な点検方法

電極棒の汚れ・スケール付着の確認

トラブルが発生した際、まず最初に確認すべきは電極棒の状態です。制御盤の電源を切り、水槽のフタを開けて電極棒を引き上げ、目視で確認しましょう。電極棒の表面に水垢やサビ、油分、スケールなどが付着していないか確認します。もし汚れている場合は、目の細かいヤスリやウエスで丁寧に磨いて汚れを落とします。特に、E1とE2、E1とE3の間隔に汚れが挟まっていないか、念入りにチェックしてください。T係長が過去に出会ったトラブルとしては、異物が電極間に絡まっていることもありました。

導通試験や絶縁抵抗のチェック方法

電極棒の清掃後、テスターを使って導通試験を行いましょう。テスターを抵抗測定モード(Ωレンジ)に合わせ、共通電極と水位検出用のそれぞれの電極の間の導通を測ります。水に浸けた状態で抵抗値が数十kΩ以下であれば正常です。次に、水を抜いた状態で電極棒間の抵抗値を測定し、無限大(非導通)であることを確認します。これで電極間の絶縁が保たれているかを確認できます。これらの数値が正常でない場合は、電極棒の断線や配線の問題が考えられます。

リレー寿命の目安と交換サイクル

電極棒に問題がない場合は、61F本体の動作を確認します。本体の端子E1、E2、E3にそれぞれリード線を接続し、電極間の通電を模擬します。例えば、給水制御の場合、まずE1とE3間を短絡させてリレーがONになるか確認します。次に、E1とE2間を短絡させ、リレーがOFFになるかを確認します。この手順で正しく動作しない場合は、リレー本体の故障である可能性が高いです。

61Fは、内部のスイッチング回数によって寿命が決まります。オムロンからはリレーの開閉回数の寿命は10万回と言われています。頻繁にON/OFFを繰り返す環境では、寿命は短くなります。設備稼働時間やスイッチング頻度を考慮し、計画的に交換サイクルを設けることが、トラブル予防には非常に有効です。例えば、重要な設備であれば、3年~5年を目安に交換を検討すると良いでしょう。

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まとめ:永遠の信頼性はない

本記事では、オムロン61Fフロートレスリレーの仕組みから故障診断、点検方法までを解説しました。シンプルな構造ながら高い信頼性を持ち、正しく設置・点検すれば長期間安定して使用できます。トラブルの多くは電極棒の汚れや断線が原因であり、定期清掃や導通確認を行うことで未然に防止可能です。リレー本体の寿命も考慮し、計画的な交換を行えば設備停止のリスクを大幅に減らせます。61Fを正しく理解し運用することで、現場の安定稼働と安全確保につながるでしょう。

この記事を書いた人
T係長

30歳で制御設計の世界に飛び込み、未経験から10年以上にわたり、プラント設備の制御設計・更新・改造案件に携わってきました。これまで100件を超える現場経験を通じて、設計図面から制御盤、シーケンス制御、保護協調まで幅広い電気技術を磨いてきました。
保有資格は「第二種・第三種電気主任技術者」「第二種電気工事士」「基本情報技術者」。資格の枠にとらわれず、現場で困っている人を助けられる技術者であることを大切にしています。
このブログ「誠電気設計」では、初心者や若手エンジニアの方にもわかりやすく、実務に役立つ知識を共有しています。学びを通じて、読者とともに成長し続けることを目指しています。

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