はじめに
流量計は工場、空調システム、食品や薬品製造ラインやプラントにおいて、液体や気体の流れる量を測定するための欠かせない計測機器です。測定できる流量には「体積流量」と「質量流量」の2種類があります。どちらを重視するかによって、適切な流量計のタイプが異なります。
この選定を誤ると、トラブルや余分なコストにつながることもあります。この記事では、初心者や設計担当者向けに、流量計の選定方法をわかりやすく解説します。実務でよくある判断基準や選定の流れも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
選定前に確認すべき4条件
① 流体の特性を整理する
流体の 1.種類、2.密度、3.粘度、4.導電率、5.異物混入の有無、6.想定流量につき整理をしましょう。
1. 種類(液体・気体・蒸気)
流量計を選定する際、測定対象が「液体」「気体」「蒸気」もしくは「スラリー(固体と液体の混合物)」のどれかを明確にする必要があります。たとえば、水や油などの液体には電磁式、空気やガスには面積式や超音波式、蒸気には差圧式や面積式が適していると言われています。誤ったタイプを選ぶと、正確な測定ができずトラブルの原因になります。
補足ですが、「気体」は、常温・常圧で気体の状態にある物質のことを指します。酸素や窒素、天然ガスなどが代表例です。圧力をかけたり冷やしたりすれば液化しますが、通常の状態では気体です。一方、「蒸気」は、蒸気は、もともと液体や固体だった物質が蒸発・気化して気体になった状態です。代表例が水蒸気です。蒸気は温度や圧力の変化ですぐに凝縮して水に戻るという特徴があります。
2. 密度
流体の密度は、流量計の測定精度に影響します。とくに質量流量を測定する場合、密度が正しく設定されていないと誤差が生じます。気体や蒸気は温度や圧力で密度が大きく変わるため、密度補正機能付きの流量計が必要になるケースもあります。
補足ですが、「質量流量」は、1秒間に何キログラム(kg)や何トンの流体が流れるかを表します。
たとえば、「1時間に500kgの蒸気が流れる」というような形です。重さベースで管理が必要な場面に使われます。一方の「体積流量」は、1秒間に何リットル(L)や何立方メートル(m³)の流体が流れるかを表します。たとえば、「1分間に100Lの水が流れる」というような表現です。配管サイズの設計やポンプ容量の計算、今回のような流量計の選定などに使われます。
3. 粘度
流体の粘度(ドロドロ度)は、流れ方や流量計の内部構造に大きく関係します。たとえば、オイルのように粘度が高い液体は、タービン式や超音波式よりも容積式やギア式の流量計が向いています。粘度に適さないタイプを選ぶと、内部で詰まりや誤動作が発生することがあります。もちろん、気体や蒸気の場合には粘土の考慮は必要ありません。
4. 導電率
導電率とは、液体が電気をどれだけ通すかを示す値です。電磁式流量計は、導電率が一定以上の液体でないと測定できません。たとえば、純水や油のように電気をほとんど通さない液体では使えません。導電率の情報は、流量計の原理選定において重要なポイントです。もちろん、電磁式以外の流量計を使用する場合には導電率の考慮は必要ありません。
5. 異物混入の有無
異物が混入する流体には、可動部のない流量計を選定するのが基本です。電磁式や超音波式は内部に回転部がなく、ゴミや固形物による詰まりや故障を起こしにくいため適しています。また、接液部が広く、耐摩耗性に優れた高密度ポリエチレン管などの材質を選ぶことも重要です。異物の種類やサイズを事前に把握し、必要に応じてフィルターやセルフクリーニング機能付きの機種を選ぶことで、安定した測定とメンテナンス性が確保できます。
6. 想定流量(最大・最小)
配管内を流れる流体の最大流量と最小流量を把握しておくことは非常に重要です。流量計は、一定の測定範囲内でしか正確な測定ができません。範囲を超えると誤差が大きくなったり、測定できなくなったりします。必ず使用条件にあった流量計を選定しましょう。
② 測定目的(精度)
目的に適した精度を把握することが、コストと機能のバランスを取るためには大切です。たとえば、監視や警報に使用する程度であれば制度はそれほど高くなくても良いでしょう。一般的な差圧式や電磁式などが適することが多いです。一方で、流量をによる制御に使用する場合には、高い精度が要求されることもあります。このような場合には、容積式やタービン式などの流量計から選ぶことになるでしょう。
③ 設置環境
流量計を設置する環境によっては、防塵・防水性能を示すIP等級や、防爆対応が必要になります。屋外や水しぶきがかかる場所では、IP65以上の製品が推奨されます。また、可燃性ガスや粉じんが存在する危険場所では、防爆構造を備えた機種を選定する必要があります。誤った選定は、安全性や機器寿命に大きく影響するため、設置場所の環境条件を正確に確認したうえで適切な仕様を選びましょう。
④ 出力形式
流量データをどう出力するかも重要です。アナログ(DC4-20mA)信号をPLCに取り込むのか、警報設定器を用いて異常高や異常低の信号を作るのか、デジタル(パルス)信号で計測を行うのかなど、事前に整理しておくことが大切です。
補足ですが、パルス信号を制御盤で受ける場合には、「パルス幅が短すぎてリレーがONしない」や「電気的な開閉回数を超えてしまって動作不良になった」などの不具合にならないよう、適切な制御盤側の機器選定や、保守管理も必要になります。
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流量計の主な方式とその特徴
■ 比較表(簡易版)
| 種類 | 適応流体 | 精度 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| 差圧式 | 液体/気体/蒸気 | 中~高 | 安価、対応流体が広い | 圧力損失大、直管長必要 |
| 電磁式 | 液体(導電) | 高 | 詰まりにくい、異物に強い | 導電性が必要 |
| 面積式 | 液体 | 低~中 | 安価、構造簡単 | 垂直設置限定、精度低め |
| 超音波式 | 液体/気体 | 中~高 | 非接触も可、取付柔軟 | 泡・異物に弱い |
| 羽根車式 | 液体 | 中 | 安価、構造簡単 | 異物に弱い、摩耗・詰まり |
| 熱式 | 気体 | 中~高 | 微小流量可、高感度 | 温度変化に影響受けやすい |
| コリオリ式 | 液体/気体 | 非常に高 | 質量測定可、流体特性に強い | 高価、構造が複雑 |
| 容積式 | 液体 | 高 | 粘度に強い、高精度 | 異物に弱い、可動部あり |
| 渦式 | 液体/気体/蒸気 | 中~高 | 汎用性高い、可動部なし | 低流量に弱い |
| タービン式 | 液体 | 高 | 高精度 | 清浄流体限定、異物に弱い |
| 堰式 | 液体(水) | 低~中 | 安価、電源不要 | 開放系限定、屋外設置が前提 |
■ 差圧式流量計
オリフィスやノズルなどで流体に圧力差を与え、その差から流量を算出します。差圧式では電源供給が不要なため、構造がシンプルで価格も比較的安価です。気体・液体・蒸気すべてに対応できますが、直管長の確保や圧力損失によって誤差が出てしまうこと注意が必要です。
■ 電磁式流量計
導電性のある液体の流れを磁場中で検出する方式です。可動部がなく、汚れた液体やスラリー(液体と固体の混合物)にも強く、詰まりにくいのが特長です。ただし、非導電性の流体(純水や油)には使用できません。
■ 面積式流量計(フロート式)
流量に応じて円錐状の管内をフロートが上下し、その位置で流量を読み取る方式です。構造が単純でメンテナンス性に優れますが、精度はやや劣り、設置方向を垂直としなければならないという制約があります。
■ 超音波式流量計
超音波の伝播速度の変化から流速を計算する方式です。非接触または非侵入型もあり、配管の外側に後から設置して測定できるタイプもあります。液体・気体両方に対応できますが、気泡や異物によって正しく測定ができない点に注意が必要です。
■ 羽根車式流量計
流体の流れで羽根車を回転させ、その回転数から流量を求めます。構造が簡単で安価ですが、異物や粘性の高い流体には不向きです。定期的な清掃や整備が欠かせません。
■ 熱式流量計
流体による熱移動量を検出して流量を測定します。特に微小なガス流量の測定に適しており、センサーの感度が高いのが特徴です。ただし、温度変化の影響を受けやすい点に注意が必要です。
■ コリオリ式流量計
流体の質量流量を直接測定できる高精度タイプです。振動するチューブに流体が通ることで生じるコリオリ力によりチューブがねじれます。このねじれの大きさから、流れている流体の質量流量を正確に測定することができます。液体・気体・スラリーなど幅広く対応可能ですが、価格は高めです。
※「コリオリ力」とは回転している物体の中で物体が動くときに、進行方向が曲がって見える力のことです。たとえば、偏西風や洗面台に溜めた水を一気に抜くときに渦ができるのも、この「コリオリ力」によるものです。
■ 容積式流量計
流体を一定の体積単位で機械的に計測する方式です。高粘度液体にも強く、非常に高精度です。ただし、可動部があるため異物には弱く、定期的なメンテナンスが必須です。
■ 渦式流量計
配管内に設置したブロックの後ろに発生するカルマン渦の周波数から流量を測定します。液体・気体・蒸気すべてに対応でき、構造も比較的シンプルですが、低流量では精度が落ちます。
■ タービン式流量計
羽根車を高速で回転させ、その回転数から流量を算出します。精度は高めですが、清浄な流体向けで、異物や粘性の高い流体には不向きです。定期的なメンテナンスが必須です。
■ 堰式流量計
水路に設けた堰の越流量から流量を算出する方式です。水処理や農業用水などで利用されます。構造は簡単で電源不要ですが、屋外設置前提で、精度は堰の設計次第です。
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よくある選定ミスとその対策
選定ミス①:非導電性の液体に電磁式を使用し測定不能に
電磁式流量計は、電気を通す液体(導電性液体)でしか測定できません。純水や油などの非導電性液体を流す配管にこの方式を使うと、まったく測定されないという重大な問題が起きます。導電率は流量計選定時の基本情報です。必ず使用する液体の性質を事前に確認し、測定原理に合った機種を選びましょう。
選定ミス②:低流量にタービン式を使用し測定精度が出ない
タービン式流量計は、一定以上の流速がないと羽根車が回らず、正確な測定ができません。低流量域では感度が不足し、誤差が大きくなったり流量を検出できなかったりします。選定時には必ず最小流量と最大流量を確認し、流量範囲に合った方式(例えば熱式や容積式)を選ぶことが精度確保の要です。
選定ミス③:屋外設置に防水機能のない機器を使用し故障
屋外や湿度の高い環境でIP等級の低い流量計を使うことは、水の侵入による短絡や腐食で故障の原因になるので絶対に避けましょう。設置環境に応じて、IP65以上や防雨構造、防爆構造の有無を事前に確認してください。流量計の長期安定運用には、設置場所と保護性能の整合が欠かせません。
選定ミス④:異物混入があるのに可動部のある流量計を選定
スラリー(液体と固体の混合物)やゴミを含む流体に、タービン式や容積式など可動部のある流量計を使うと、詰まりや破損が発生します。これにより測定エラーや装置停止のリスクが高まります。異物が含まれる場合は、電磁式や超音波式など、可動部のないタイプを選ぶことで、トラブルを未然に防げます。
選定ミス⑤:蒸気や高温流体に通常仕様の流量計を使い破損
蒸気や高温の液体に対して、温度耐性のない流量計を使用すると、センサーや配線が破損して使用不能になります。特に蒸気配管では耐熱・耐圧構造が求められます。選定時には流体温度や圧力の仕様を確認し、高温対応タイプや断熱対策の有無をチェックしなければなりません。
用途別おすすめ流量計と選定ポイント
- 水・冷却水ライン:コスパ重視なら電磁式が無難です。
- 空気・圧縮エアー:超音波式や差圧式がよく使われます。
- 薬品や酸・アルカリ系流体:耐薬品性がある電磁式が最適です。
- 食品・医薬品ライン:洗浄性と衛生性を考え、コリオリ式推奨。
まとめ
流量計の選定は、流体の特性や使用環境、必要な精度を正しく把握することが成功の鍵です。本記事が選定の指針となり、現場でのトラブル防止や最適な機器導入に役立てば幸いです。確かな判断で、安定した計測と効率的な運用を実現しましょう。

