電技における接地工事の基礎知識
電気設備技術基準(電技)とは?
電技とは、電気設備の技術基準を定めた法令で、主に安全確保を目的としています。事業用電気工作物に関する施工や保守において、遵守すべき内容が記載されています。中でも接地工事に関する規定は感電防止や漏電対策において重要な役割を果たします。施設の種類や電圧、系統構成に応じて、必要な接地種別が細かく定められています。
接地の目的と必要性
接地は電気回路を地面に接続することで、電位を安定させ事故を防ぐ役割があります。また、地絡時電流の流れる回路を構築する重要な役割を果たします。「感電防止」、「過電圧の抑制」、「漏電時の保護機能の確保」などが挙げられます。接地が適切に行われないと、漏電保護装置が動作しない危険な状態になります。われわれ電気設計者には、施設の用途に応じた接地種別を正しく選定し、確実に施工することが求められます。
A種〜D種の接地種別とは
電技第17条では、接地工事をA種、B種、C種、D種の4種類に分類しています。それぞれ適用対象や接地抵抗値の上限が異なり、法令で明確に規定されています。一方でD種は一般低圧機器に適用され、接地抵抗値は原則100Ω以下に制限されます。
| 種別 | 主な用途・対象機器 | 接地抵抗の基準 |
|---|---|---|
| A種 | 高圧以上の機器 | 10Ω以下 |
| B種 | 変圧器二次(高圧と低圧が混触した場合に絶縁破壊を防止する) | 計算式に依る |
| C種 | 300Vを超える低圧の機器 | 10Ω以下 |
| D種 | 300V以下の低圧の機器 | 100Ω以下 |
旧接地種別(E1〜E3分類)
かつては EA → E1、 EB → E2、 EC → E3S、ED → E3 という分類で扱われていました。古い図面を見ていると登場します。この他に計装用接地種別を分ける場合もありますが、保護接地以外の「ノイズ」の観点も入り込んできますので、また別の機会にお話しします。
| 種別 | 主な用途・対象機器 | 接地抵抗の基準 |
|---|---|---|
| E1 | 高圧以上の機器 | 10Ω以下 |
| E2 | 変圧器二次(高圧と低圧が混触した場合に絶縁破壊を防止する) | 計算式に依る |
| E3S | 300Vを超える低圧の機器 | 10Ω以下 |
| E3 | 300V以下の低圧の機器 | 100Ω以下 |
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工場における接地の考え方
高圧機器や受変電盤、キュービクルの接地要件
工場では多くの場合、高圧受電設備を有しており、A種、B種接地が必須となります。盤内の避雷器、計器用変成器、保護継電器などはA種接地対象です。また、変圧器の中性点にはB種接地が義務付けられています。
C種・D種の使い分けと注意点
C種接地は、主に300Vを超える機器ならびに当該機器を収納する筐体の設置に必要です。AC420V/440V級の誘導電動機を使用している場合にはC種接地が必要になります。D種接地は、一般的な電気機器の接地に求められます。制御盤やコンプレッサ、ポンプ設備などにはD種接地がよく使われています。
製造ラインやロボット制御盤の接地実例
例えば自動車工場では、ロボットの制御盤にD種接地が用いられるのが一般的です。注意したいのは工場で用いられる負荷にはインバータ制御を用いるものがあります。これらのインバータ負荷はノイズを含むため、専用接地を設けることが推奨されることが一般的です。また、通信回線との混触を避けるため、接地間の等電位差対策も必要となる場合があります。現場では複数の接地種別を組み合わせて、機器ごとの保護要件に応じた設計が行われます。
病院における接地の特徴
医用接地と一般接地の違い
病院では、通常の接地に加えて「医用接地」という特殊な要件が存在します。これは医療機器の感電事故を防ぐ目的で、非常に低い接地インピーダンスを求めます。電技のA種接地に相当するレベルです。特に手術室やICUでは、漏電による影響が患者の生命に関わる重大なリスクになります。そのため、専用アースや絶縁監視装置と組み合わせて管理されることが多いです。詳細は JIS T 1022:2018 に規定されます。
非接地配線方式
医療用接地における「非接地配線方式」は、主に手術室や集中治療室(ICU)など、患者の生命に関わる医療機器が使用されるエリアで採用される特別な接地方式です。この方式の最大の目的は、「電源系統の一部に地絡が発生しても、即座に電源を遮断せず医療機器の継続使用を可能にすること」です。
通常の接地系であるTN方式やTT方では、一線地絡が起きると漏電遮断器が動作して電源が切れます。これが医療現場で起これば、人工呼吸器やモニターといった重要機器の動作が停止し、患者の命に直結する事故につながりかねません。そこで非接地配線方式では、電源系統(主に単相2線)を大地から絶縁した状態で運用し、万一の一線地絡時も電流の流れを抑えて機器を停止させず、作業者に感電も起こさないよう配慮されています。
この方式では絶縁状態の劣化を早期に検出するために、「絶縁監視装置(絶縁監視計)」が不可欠です。絶縁監視装置は、各線と大地との間に微弱な信号を注入し、絶縁抵抗の変化を常時監視します。異常があれば即座にアラームで警告し、保守担当者が点検・修理に向かう体制を整えることで、予防保全が実現されています。このように、非接地配線方式は医療現場での「安全な連続運用」と「絶縁異常の早期発見」を両立するための非常に重要な仕組みです。
設計・施工時のポイントと注意点
避雷針や通常の接地極との連結の可否
避雷針の接地と動力機器の接地を連結するかは、設備ごとの判断が求められます。基本的には連結可能ですが、ノイズ影響や雷電流の経路を考慮する必要があります。ただし、療施設や高精度制御機器では、誤動作防止のため分離接地が選択されることもあります。この時、接地間の電位差が大きくなると危険なため、等電位接地をする追加の対策を講じることがあります。
接地工事における実務上のトラブル例
現場で多いのは、接地線の接続不良や導通不良による機器誤作動です。また、接地極の埋設深さ不足や錆びによる抵抗値上昇もよく見られる事例です。定期点検の際には接地抵抗を測定し、適切な工事計画を立てましょう。また、近年ではインバータ負荷が増えている影響で高調波などのノイズが、接地端子箱内の接地バーを通じてノイズが回り込んでしまい、機器の誤動作を引き起こすことがあります。特に漏電遮断器の誤動作はよく発生します。高調波対策を講じた漏電遮断器を使用したり、ケーブルルートを正しく選定したりする対策が有効です。
施工図への反映と記載のコツ
設計段階で接地種別を明記し、施工図や盤図面上にも系統的に表記しておくべきです。また、系統図や配線図に記号や色分けを導入すると、現場での視認性が向上します。アースマークや接地抵抗値を明記することで、保守時の確認作業が容易になります。誤接続を防ぐためにも、盤内には各接地ポイントごとにラベル付けが推奨されます。
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接地方式の系統図(TN方式,TT方式, IT方式)
ここでは代表的な接地方式を簡単に解説します。IEC 60364/JIS C 60364 では低圧の配電系統における接地方式の表現を規定しています。一般的には □□-□ の形で表現することが多いです。
・第一文字:電力系統と大地との関係を表します。
T : 1点を大地(Tera)に直接接続(系統接地)
I : 全充電部を大地から絶縁(Insulate)
大きいインピーダンス(Impedance)を介して1点を大地に接続
・第二文字:設備の露出導電性部分と大地との関係を表します。
T :電力系統の接地とは無関係に、露出導電性部分を大地(Tera)へ直接接続(機器接地)
N :露出導電性部分を電力系統の接地点へ直接接続
※交流系統では通常、中性点(Neutral)
・その次の文字(ある場合): 中性線および保護導体の配列を表します。
S :保護導体の機能を中性線または接地側相とは別の(Separate)導体で行う
C :中性線および保護導体の機能を一つの導体(PEN導体)で兼用(Conbined)
TN-C方式(NeutralとEarth共用)
特徴
TN-C方式は、電源側の中性線(N)と保護導体(PE)を1本の導体(PEN)として共用する方式です。電源と保護導体となる筐体が同電位となるため、雷サージやノイズに強いという特徴があります。欧州で多く採用されますが、日本では限定的な利用です。
採用時の注意点
地絡した場合に、機器の外装や接地された金属部に短絡電流に相当する大きな地絡電流が流れ、感電や火災の危険が増大します。また、機器の外装電位が浮き上がり、接触時に高電圧が印加されることがあります。そのため、PEN線は十分な太さを確保し、接続部の確実な締結・腐食防止が重要です。さらに、分電盤以降で中性線とPE線を分離する必要があり、その際にアース端子の配置や識別を明確にして誤接続を防ぐ工夫が求められます。特に日本国内では、この方式の採用は絶縁監視や漏電保護器の動作に影響する場合があるため、規格や電技解釈を十分に確認する必要があります。
TN-S方式(NeutralとEarth分離)
特徴
TN-S方式は、電源側で中性線(N)と保護導体(PE)を分離し、需要家まで別々に配線する方式です。PEN線を共用しないため、保護導体は電流を流さず、常時ほぼゼロ電位を維持できます。そのため、感電や機器誤動作のリスクが低く、安全性に優れます。工場、病院、データセンターなど、電源品質と安全性が重視される施設で広く採用されています。
採用時の注意点
PE線は必ず電源変圧器の二次側接地極と接続し、全ての機器筐体と確実に結びます。また、PE線とN線がどこかで接続されると、漏電遮断器が誤動作する恐れがあるため、混線防止の施工管理が重要です。電磁ノイズの影響も少ないため、情報通信機器や医療機器には好適ですが、導体数が増える分、配線コストやスペースが必要になります。特に既設設備からの改修では、ケーブルルート確保と経済性のバランスを考える必要があります。
TT方式(独立接地)
特徴
TT方式は、電源側の接地(中性点接地)と需要家側の機器接地を独立して行う方式です。需要家は自前の接地極を設置し、機器筐体や保護導体をその接地極に結びます。日本の低圧配電系統ではこの方式が一般的で、住宅や小規模施設で広く使われます。漏電遮断器と組み合わせることで感電保護を実現します。
採用時の注意点
保護導体が電源側接地と直接つながらないため、漏電時には接地抵抗を通じて故障電流が流れます。このため、接地抵抗値が高いと十分な地絡電流が得られず、漏電遮断器が動作しない場合があります。そのため、定期的な接地抵抗測定が求められます。また、雷サージの影響を受けやすいため、避雷器(SPD)や接地極間の電位差対策も検討が必要です。
IT方式(絶縁電源方式)
特徴
IT方式は、電源側の中性点を接地せず(または1点を高インピーダンスを介して接地する)、需要家側機器の筐体は専用の保護接地に一括して接続する方式です。中性点を直接接地しないため、1回目の地絡が発生しても大きな地絡電流は流れず、電源を継続運転できます。医療施設の手術室や鉱山、化学プラント、データセンタなど、停電によるリスクが極めて高い設備で用いられます。
採用時の注意点
電技解釈第24条に従うと、低圧電路が非接地となる場合、変圧器を混触防止板付として、B種接地をしなければなりません。また、1回目の地絡では運転継続できますが、2回目の地絡や別相での地絡が発生すると短絡事故になります。そのため、絶縁監視装置を常設し、地絡発生時に即座に警報・記録できる体制が必須です。また、系統全体の絶縁性能を高く維持する必要があり、湿気や汚損による絶縁劣化を防ぐ保守管理が重要です。
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まとめ
電技における接地工事の基本から、A〜D種および旧E種の分類、工場や病院における実例、さらにはTN・TT・ITなどの国際的な接地方式まで幅広く解説しました。接地は感電防止や設備保護の根幹であり、正しい種別選定と確実な施工が不可欠です。設計段階から明確な表記と管理体制を整え、運用中も定期点検や測定を怠らないことが、安全で信頼性の高い電気設備の維持につながります。

