はじめに
本記事では、ブレーカの配線太さをどうやって選ぶかを解説します。単純に定格負荷電流で選べば良いのか、トリップ値で選ぶものなのか、よく分からないことが多いのではないでしょうか。モータ負荷やトランス負荷への配線を選定する際に、実務に役立つ選定方法と注意点を紹介します。
※本記事では、一般的な配線用遮断器を「ブレーカ」と記載しています。実務上は「MCCB」や「MCB」などで呼ばれることも多いですが、全て同じ意味です。
※本記事では、配線の太さを「sq(スケア)」で記載するものとします。日本で一般的な表現です。アメリカ規格(AWG)表記は省略しますので、適宜読み替えてください。
配線太さと許容電流・圧着端子
一口に「配線」と言っても、電力用ケーブルや制御ケーブル、絶縁電線など様々なものがあります。本記事では、プラント設備関係者や制御盤設計者の方々を想定し、環境汚染対策として普及している「600V耐燃性ポリエチレン絶縁電線」、通称「エコ電線(EM IE/F, EM LMFC)」の「より線」を例として執筆を行います。
電線サイズ(公称断面積)と使用可能電流の早見表
JIS C 3612に基づく許容電流は、下記のとおりです。下記は一般的なものです。実際には、敷設方法や、周囲温度、配線長によって補正する必要性があります。
| 公称断面積(mm2) | 許容電流(約) | 適用例 |
| 1.25sq | 15A | 制御線 |
| 2.0sq | 22A | 制御線 |
| 3.5sq | 31A | 小負荷 |
| 5.5sq | 41A | 小型モータ |
| 8sq | 51A | 小型モータ |
※配線用ダクトへの収納本数や、周囲温度により変動します。上記は30℃の場合です。
下記のEM-LMFCはJIS規格非対応ですが、電気用品安全法(100sq以下)、電気設備技術基準(125sq以上)を満たしています。常時許容温度が高く、許容電流は大きくなるため、EM-IEに比べて細い配線とすることが可能です。
| 公称断面積(mm2) | 許容電流(約) | 適用例 |
| 3.5sq | 46A | 小負荷 |
| 5.5sq | 61A | 小型モータ |
| 8.0sq | 76A | 中型モータ |
| 14sq | 111A | 中型モータ |
| 22sq | 146A | 大型モータ |
※周囲温度により変動します。上記は30℃の場合です。
配線太さと圧着端子(アンプ)サイズ
通常の施工方法では、電線は被覆を剥き、圧着工具を用いて圧着端子を取り付けます。丸端子やY端子、棒端子など様々な種類があります。顧客ごとに仕様は異なりますが、制御盤や配電盤用で用いられることが多い JIS C 2805 (銅線用圧着端子) を例に挙げます。配線の太さによって使用できる圧着端子に制限があります。一方で、使用する機器の「端子ネジサイズ」に適した圧着端子を使用しなければ配線することができないことに注意が必要です。
| 圧着端子呼び | 適合ネジサイズ |
| 1.25-3~5 | M3~M5 |
| 2-3.5~8 | M3.5~M8 |
| 5.5-4~10 | M4~M10 |
| 8-5~10 | M5~M10 |
| 14-5~12 | M5~M12 |
| 22-6~12 | M6~M12 |
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モータ負荷への配線選定の考え方
基本的には「内線規程」に従って配線の太さを選定することになります。下記の実例で考えましょう。
(例)三相誘導電動機負荷( AC200 V 11 kW 直入)
\(I_n = \displaystyle\frac{P}{\sqrt{3} \times V \times \cos\theta \times \eta}\)
\(I_n = \displaystyle\frac{11 000}{\sqrt{3} \times 200 \times 0.8 \times 0.8}\)
\(I_n = 49.62A \)
この時、ブレーカの選定は内線規程の選定表に従うと 125AT となります。定格電流約 49.62A に対して非常に大きいトリップ値になると感じるかもしれませんが、しっかりと理由があります。モータには起動時の数秒~数十秒の間、定格の 6〜8倍 程度の大きな始動電流が流れます(詳細は起動方式に依ります)。定格電流に合わせて 50AT 程度のブレーカを選定すると、始動時にトリップしてしまいます。これを避けるため、内線規程では 125AT を推奨しています。
補足情報となりますが、近年高効率のトップランナーモータへの更新が進んでいますが、従来品よりも始動電流が大きくなりますので、将来の更新も見据えて、余裕のあるトリップ値の選定とすることが多いです。
話を本筋に戻しましょう。今回 125AT のブレーカを選定した場合、配線の太さはどうなるでしょうか。トリップ値を考慮し、 22sq(許容電流 146A) としなければならないでしょうか?
答えは「内線規程に従い 14sq(許容電流 111A) 以上」となります。配線の太さをダウンできることで、取り回しが楽になる、価格が安くなるなどのメリットがあります。
基本的な考え方は上記の通りです。これに加えて、電動機までの距離が長ければ電圧降下などを考慮して、さらに太いケーブルサイズとなってしまうこともあります。
トランス負荷への配線選定の考え方
トランスの一次側では励磁突入電流が問題となります。この励磁突入電流は、三相トランスでは定格の 10倍 以上、単三トランスでは 30倍 以上になることもあります。ブレーカを選定する時には、励磁突入電流でトリップしないような選定とする必要性があります。下記の実例で考えます。
(例)三相変圧器 210 V 50 kVA
\(I_n = \displaystyle\frac{P}{\sqrt{3} \times V }\)
\(I_n = \displaystyle\frac{50 000}{\sqrt{3} \times 210 }\)
\(I_n = 137.46 A \)
例えば、定格値の直近上位として、 150AT のブレーカ NF250-CV (150AT) を選定した場合、引き外し特性は 0.02sec (9倍)です。従って、励磁突入電流は 22倍 を想定すると(三菱低圧変圧器カタログによる)、これでは励磁突入電流でトリップしてしまいます。そこで、選定としては NF400-CW (300AT)を選定するか、変圧器一次用 BW250EAT (225AT)を選定することができます。
定格値からするとかなり大きなトリップ値となります。この時、配線の太さは変圧器の定格容量における定格電流値 137.46A を許容する 22sq(許容電流 146A)とします。例えば、 225AT に従い 60sq を選定してしまうと、適用できる圧着端子は R250-12 (M12) となります。しかし、選定したブレーカの端子サイズは M8 ですから、「配線不可」となってしまいます。
このように、単純に選定と言っても机上の空論ではなく、「実際の機器」を意識しなければならないのです。基本的な考え方は上記のとおりです。変圧器はブレーカ至近の制御盤・配電盤内に設置されることが多いので、電圧降下などの考慮は不要です。
補足ですが、上記の選定に対して、「過負荷の保護が出来なくなるのではないか」という疑問を抱くかもしれませんが、「変圧器二次側に過負荷保護用のブレーカを設置する」ことで対応可能です。一般的に、次の2つ事項を基本として理解しておきましょう。
- 変圧器一次ブレーカは短絡保護用
- 変圧器二次ブレーカは過負荷保護用
ブレーカーと配線太さの関係とは?
流れる電流が大きすぎると配線が加熱され、火災の原因になります。これを防ぐのが基本的なブレーカの役割です。配線が許容できる電流値以下でブレーカを選定することが重要です。ブレーカのトリップ値がが許容電流に対して大きすぎると、ブレーカがトリップするよりも先に配線が焼ける危険があるため、正しい組み合わせで設計することが電気設計の大原則です(過負荷保護)。
上記のことを理解した上で、「短絡保護」と「過負荷保護」の違いを理解しながら、適切な配線太さを選定することで、一段上の電気設計者を目指しましょう。
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まとめ
ブレーカと配線太さの選定は、電気設計において極めて重要な要素です。単に定格電流やトリップ値だけで判断せず、負荷の種類(モータやトランス)や始動電流・励磁突入電流の特性も考慮する必要があります。「短絡保護」と「過負荷保護」の観点から、配線の太さは許容電流に基づいて選定し、必要に応じて電圧降下や端子サイズにも注意することで、信頼性のある電気設計のカギです。

