はじめに:MEGA G2とは?用途と特徴
プラントの電動機を省エネで運転するために必要不可欠なインバータですが、日本市場では富士電機が産業用汎用インバータの国内シェア1位を占める主要メーカーです。他にも安川電機や三菱電機、日立産機システム、東芝産業機器システムが競合として挙げられます。
本記事では、国内シェアが高く、現場で見ることの多い、富士電機の FRENIC-MEGA G2 (以下 MEGA ) について、初期設定から運用までを具体的に解説します。MEGAは、高性能・高信頼性を誇る汎用インバータです。産業機械や搬送装置、ポンプやファンなど幅広い用途に使用されます。高トルク制御や省エネ運転機能を標準搭載しており、長期運用にも適します。
MEGAの基本仕様と構成
定格電圧は200V系から400V系まで幅広く対応可能です。出力範囲は小型0.4kWから大型110kWまであり、負荷特性に合わせやすいのが特長です。仕様としては、HDD(重過負荷用途)とHND(一般負荷用途)があり、過負荷耐量はHHD仕様で150%(1分間)、HND仕様で120%(1分間)の短時間対応が可能です。MEGAでは設定値の変更でこの仕様を切り替えることが可能です。過負荷運転時の負荷電流に合わせて選ぶようにしましょう。ファンやポンプなどの負荷は一般的にそれほど定格電流に対して過負荷電流が大きくなりにくい傾向がありますので、HND仕様とすることが多いです。
インバータ本体のみでは使えません。基本的な周辺機器としては、高調波の流出を防ぐための直流リアクトルや、零相リアクトル、フィルタコンデンサなども必要になります。特に高調波の低減に対してはコストを惜しむべきではありません。漏電遮断器の誤動作やその他の機器への悪影響が出てしまいます。また、設定値の変更などは、キーパッドで、直感的に操作が可能です。
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いろいろな制御モード
MEGAでは F42 の設定値を変更することで以下のようないろいろな制御を行うことができます。
1. V/f制御(スカラ制御) 設定値:0~2
V/f制御は、インバータの最も基本的な制御方式で、電圧(V)と周波数(f)の比率を一定に保つことでモータを駆動します。仕組みとしては、モータが必要とする磁束を一定に維持するために、周波数に応じた電圧を供給するだけのシンプルな方法です。構造が単純で部品点数も少なく、コストを抑えられることが大きなメリットです。また、センサや複雑な演算が不要なため、設定や配線も容易で、初心者でも扱いやすい方式といえます。
一方で、モーターの負荷変動に対する応答性や速度精度は高くありません。そのため、高精度な速度制御やトルク制御を必要としない送風機やポンプなどの用途で多く採用されます。汎用性が高く、低コストかつ安定動作を求める現場では今でも広く利用されている方式です。制御精度を上げるために、ダイナミックベクトル制御やすべり補償有り制御を採用することもできます。
代表例は送風機やポンプ、一定速度で動く搬送コンベヤなどです。応答性よりも安定性とコスト重視の用途に向き、センサレスやPG制御ほどの複雑さは不要な現場で採用されます。
電験三種の理解と結び付けたい方は下記の記事も合わせてご覧ください。
2. センサレスベクトル制御
センサレスベクトル制御は、モーターの回転速度や位置情報をエンコーダなしで推定し、ベクトル制御を行う方式です。インバータ内部で電流や電圧の情報からモーターの回転状態を推測し、その情報を基に磁束とトルクを独立して制御します。これにより、高い始動トルクや優れた速度応答性が実現でき、一般的なV/f制御よりも制御精度が向上します。
エンコーダを使わないため設置コストや配線作業が軽減される一方、低速域では推定精度がやや劣る場合があります。それでも多くの産業機械や搬送装置では十分な性能を発揮し、省スペース化や低コスト化に貢献します。特に、位置センサが設置できない環境やメンテナンス性を重視する現場で選ばれることが多い制御方式です。
搬送装置、包装機械、食品加工機械など、低速時の高トルクや速度変動への追従が必要な負荷に最適です。
3. センサ付きベクトル制御
センサ付きベクトル制御は、モータ軸にエンコーダなどの速度・位置センサを取り付け、回転速度や位置情報をリアルタイムで取得します。そのデータをもとに、電流ベクトルの位相と大きさを緻密に制御することで、トルク応答性や速度制御精度を大幅に向上させます。従来のV/f制御やセンサレス制御に比べ、ゼロ速付近のトルク発生や急加減速時の安定性に優れており、負荷変動の大きい装置や高精度な位置決めが必要なアプリケーションに適しています。また、低速域でも定格トルクを維持できるため、サーボモータ並みの性能をインバータ駆動で実現可能です。MEGA G2は演算処理速度の高速化により、突発的な負荷変動にも即座に応答可能です。
クレーンや巻き上げ機、エレベータなどの低速高トルクが必要な装置に適しています。また、工作機械や搬送装置のように高精度な速度・位置制御が求められる用途、負荷変動の激しいコンプレッサや押出機などでも高い安定性を発揮します。
4. PGベクトル制御(フィードバックベクトル制御)
PGベクトル制御は、モーター軸に取り付けたパルスジェネレータ(PG)やエンコーダから回転速度・位置を直接検出し、その情報を基にベクトル制御を行う方式です。センサレス方式と比べて位置情報の精度が高く、非常に安定した速度制御やトルク制御が可能です。応答性も極めて高く、負荷変動が大きい運転でも目標値をすぐに追従できます。
ただし、センサの設置や配線が必要で、コストや設置工数は増加します。それでも高い生産精度や品質を求める現場では、PGベクトル制御が標準的な選択肢となっています。位置決めや同期運転が必要な工作機械、印刷機、巻き取り機、ロボットなどに向きます。負荷変動や高速応答にも強く、品質や生産精度を重視する現場で採用されています。
5. 回生制動制御(回生運転モード)
回生制動制御は、モーターが減速するときに発生する回転エネルギーを電源側へ戻す方式です。通常、減速時のエネルギーは熱として抵抗器に消費されますが、回生制動制御ではこれを有効利用できます。これにより、省エネ効果が期待できるだけでなく、ブレーキ性能も向上します。場合によっては、回生ユニットやブレーキ抵抗器を併用して過電圧を防ぐ必要があります。
初期導入コストはやや上がるものの、長期的には電力コスト削減や発熱低減による機器寿命の延長が見込めます。省エネ化や効率運転を重視する現場では注目される制御方式です。エレベータや搬送機、クレーンなど、頻繁に加減速を繰り返す装置で特に有効です。
5. トルク制御モード
トルク制御モードは、モーターの出力トルクを直接制御する方式で、負荷変動に対して安定したトルクを維持します。この方式では、トルクセンサや電流演算を用いて、モーターの出力トルクを正確に管理します。これまでのモードに比べて負荷変動時の安定性が高く、製品品質や加工精度のばらつきを抑える効果があります。
ただし、トルク一定制御の特性上、速度が変動する場合があるため、用途によっては速度制御との組み合わせが必要です。トルクが製造品質や工程安定性に直結する現場では、非常に有効な制御モードです。巻き取り機、押出機、ミキサー、圧延機などで効果を発揮します。
初期設定の流れと基本パラメータ
電源投入後、パネル表示が安定したら初期リセットを実行します。自動チューニング機能という、モータ特性を自動測定し、最適な制御パラメータを設定する機能があります。まずモータを接続し、インバータのパラメータで「自動チューニングモード」を選択します。次に、静止チューニング(モータを回さず抵抗やインダクタンスを測定)か回転チューニング(実際に回転させて精密測定)を選びます。実行すると、モータの定数やセンサ情報を基に最適な電流制御・ベクトル制御パラメータが自動設定されます。これにより、ゼロ速トルクや加減速応答が向上し、立ち上げ時間や調整工数を大幅に削減できます。
キャリア周波数設定
キャリア周波数は、インバータがモータを駆動する際に出力するPWM(パルス幅変調)信号のスイッチング周波数を指します。単位はkHzで、MEGAでは数kHz〜十数kHzまで設定可能です。キャリア周波数が高いほどPWM波形が細かくなり、モータ電流の波形が滑らかになって騒音が低減します。
ただし、スイッチング損失が増えるためインバータ本体やモータの発熱が大きくなり、容量低減や冷却強化が必要になる場合があります。一方、低いキャリア周波数は効率面では有利ですが、モータの唸り音が大きくなる傾向があります。
設定時の注意点としては以下の通りです。
- モータ・インバータの温度上昇:高周波設定は長時間運転で過熱しやすいため、発熱監視や定格電流の余裕を確保すること。
- ノイズ影響:高周波はEMI(電磁妨害)が増えるため、周辺機器の誤動作防止にフィルタやシールドケーブルが有効。
- 騒音対策とのバランス:静音性を重視する用途(ビル空調など)では高め、効率・耐久性重視の用途(産業機械)では低めに設定するのが一般的。
つまり、キャリア周波数は静音性・効率・発熱のバランスを考えて決めるパラメータです。用途に応じて試運転で最適値を探るのが望ましいです。
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運転条件に合わせた詳細設定
加減速時間整定
加減速時間は、パラメータ F002(加速時間)と F003(減速時間)で設定します。単位は秒で、0.1~3600秒まで設定可能です。短く設定すると応答は速くなりますが、モータや負荷への負担、過電流トリップの原因になります。逆に長すぎると生産性が低下するため、負荷慣性や許容トルクを考慮して設定します。急加速が必要な場合はトルクリミット設定や回生能力も確認が必要です。
最低周波数整定
最低周波数は F001(最低周波数)で設定します。この値より下には周波数が下がらないため、機械保護や低速での不安定運転防止に有効です。設定を高くしすぎると停止近くまで減速できなくなるため、用途に応じた最小回転数を考慮して決めます。ポンプではキャビテーションを防ぐ目的で、モータの特性と設備条件に合わせて適正値を設定します。
多段速運転機能
多段速運転は、外部端子の組み合わせにより最大8段階まで速度指令を切替できる機能です。速度値は F201~F208 にそれぞれ設定します。端子入力の組み合わせで選択するため、配線間違いや端子設定(H20x系パラメータ)に注意が必要です。速度切替時の加減速は、通常の加減速時間設定が適用されますが、必要に応じて多段加減速機能を併用するとスムーズな運転が可能です。
PID制御
PID制御は、外部からのアナログ信号をフィードバックとして速度や流量、圧力制御を行う機能です。まず P001 でPID制御を有効化し、P100~P102で比例(P)、積分(I)、微分(D)ゲインを設定します。過剰なゲイン設定はハンチングや不安定運転の原因となるため、低めから調整するのが安全です。外部信号のスケーリングや極性(P110系)も確認し、逆動作を防止します。
保護機能とアラーム設定
過負荷保護はモーター容量や用途に合わせた値を入力します。過電流や過電圧などの保護機能も用途に応じて有効化しましょう。異常発生時にはパネル表示やアラーム履歴から原因を特定します。保護機能を適切に設定することで、故障リスクを大幅に低減できます。他にもありますが、下記のような故障検出が可能です。
1. 過負荷・過電流保護
- モータ過負荷(OL):モータ電流が過大で熱的限界に近づいた場合に動作。
- インバータ過負荷:内部素子温度上昇や定格電流超過時にトリップ。
- 瞬時過電流:短絡や急激な負荷変動で大電流が流れた場合に遮断。
2. 過電圧・不足電圧保護
- 過電圧(OV):回生ブレーキや負荷減速時に直流リンク電圧が上昇しすぎた場合に動作。
- 不足電圧(UV):電源電圧低下や瞬時停電時に運転継続が困難な場合に停止。
3. 過熱・温度異常保護
- インバータ内部過熱:冷却フィンやヒートシンク温度が規定以上になった場合。
- 制動抵抗器過熱:長時間ブレーキ動作や過剰な回生エネルギー時に動作。
- モータサーミスタ動作:PTC/NTC検出でモータ巻線温度上昇を監視。
4. 接地・配線異常保護
- 入力欠相:電源三相のいずれかが欠けた場合に検出。
- 出力欠相:モータ配線断線や端子接触不良を検出。
- 地絡保護:モータ回路や配線での接地故障を検出。
5. 制御異常・フィードバック異常
- PG(パルスジェネレータ)断線:センサ付きベクトル制御時のエンコーダ信号断線。
- PIDフィードバック異常:外部プロセス信号断線や値異常を検出。
- CPUエラー/通信エラー:内部制御異常や外部機器との通信断。
よくある設定ミスと対処法(自動チューニング後)
① チューニング後のモータ定数未保存
自動チューニング実行後、保存操作を忘れると電源OFFで設定が消え、次回起動時に再チューニングが必要になります。チューニング完了後は必ずパラメータ保存(書き込み)を実行し、必要に応じてバックアップ機能やメモ帳で設定値を記録しておきましょう。T係長もやってしまったことがあります。焦っていたり、変なタイミングで電話がかかってきてしまったりすると、ポカすることはあります。
② 制御モード未変更
チューニングは実行しても、制御モード(センサ付きベクトル制御やセンサレスなど)を正しく切り替えないと性能が発揮できません。運転モードパラメータを確認し、チューニングに合わせた制御方式へ変更することが必要です。
③ PG(エンコーダ)信号設定ミス
センサ付き制御でエンコーダのパルス数や極性設定を誤ると、速度検出エラーや制御不安定が発生します。チューニング後も必ずPG設定パラメータを見直し、回転方向チェックや低速試運転で信号が正しく読めているか確認します。
④ 負荷条件未考慮のまま運転
チューニングは無負荷または軽負荷で実行することが多く、実際の負荷条件では異なる挙動を示す場合があります。本番運転前に実負荷を接続した状態で試験し、トルクリミットや加減速時間を再調整することが必須です。
⑤ チューニング結果への過信
自動チューニングは便利ですが、モータや配線の状態が劣化している場合には誤った値を記録することがあります。実測電流や発熱、振動を確認し、必要に応じてパラメータを微調整することが安定運転のために重要です。
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メンテナンス時のパラメータバックアップ方法
メンテナンス時にパラメータバックアップを行う際は、必ず運転停止状態で作業を開始してください。バックアップは内蔵メモリに保存されるため、誤操作によるデータ破損を防ぐため、操作パネルや通信機器の接続状態を確認することが重要です。
また、バックアップデータはUSBメモリなど外部媒体に保存するのが推奨良いでしょう。異常時の迅速な復旧に役立ちます。パラメータ変更後は再度バックアップを必ず取り、設定内容が反映されていることを確認してください。万が一のトラブルを避けるため、マニュアルに沿った手順で慎重に操作を行うことがポイントです。
まとめ
富士電機MEGA G2は、多彩な制御モードと高い信頼性を持ち、幅広い産業機械に適したインバータです。初期設定の自動チューニング機能により、モータ特性に最適化されたパラメータ設定が可能で、効率的な運転を支援します。運用時は設定ミスを防ぐため、制御モードやパラメータの保存・バックアップを確実に行うことが重要です。特にメンテナンス時には運転停止の上、バックアップを外部媒体に保存し、復旧に備えることが安定稼働のポイントです。正しい設定と運用で、省エネかつ安全なプラント運転を実現しましょう。


