太陽光発電(逆潮流無)における地絡継電器の注意点:高圧需要家での考え方

太陽光発電(逆潮流無)の地絡継電器 受変電

はじめに:太陽光発電で増える「地絡保護」の落とし穴

私たち電気エンジニアが関わる高圧需要家に太陽光発電設備を設けるケースが増えています。特に、逆潮流なし(需要家側で発電を使い切る)構成では、受電系統と発電系統が一体的に動作するため、地絡継電器(GR)の扱いが非常に重要になります。しかし、太陽光を「単なる負荷」と誤認して地絡保護協調を従来設計のままにすると、不必要な停電や誤動作につながることがあります

この記事では、高圧需要家設備に太陽光発電設備を設置する場合に、設計者が困るポイントを、地絡継電器の①設置個所②動作感度③動作時間に関する要点を解説します。このブログを読めば、もう迷うことはありません!


系統構成を理解しよう:逆潮流なしの太陽光接続とは

系統連系においてよく使われる用語に、「逆潮流あり/なし」「自立運転」「単独運転」があります。これらは太陽光発電などの分散型電源を取り入れた設計をする際に非常に重要な概念です。まず「逆潮流あり」とは、発電量が需要を上回り、余剰電力が電力会社側へ流れる状態を指します。この場合、系統に電力を送り出すため、電力会社との連系協議や逆潮流防止装置、保護協調の検討が不可欠となります。一方で「逆潮流なし」は、発電した電力を需要家内で自家消費する構成です。余剰電力が発生しないため、連系点から電力会社側へは電力が流れません。

次に「自立運転」は、停電時に太陽光発電が系統から切り離され、自家消費のみに限定して運転を続けるモードを指します。停電中でも一部の負荷を稼働させることができます。これに対し「単独運転」とは、系統と接続されたまま電力を逆送する危険な状態を意味します。系統側が停電しているにもかかわらず発電装置が電圧を印加し続けるため、作業員の感電や系統事故を招くおそれがあります。そのため、太陽光発電設備のパワーコンディショナ(PCS)には、必ず単独運転防止機能が搭載されており、電力会社の連系要件でも厳格に定められています。

これらの概念を正しく理解することで、系統連系の安全性と信頼性を確保し、太陽光発電設備の設計や保護継電器設定をより適切に行うことができます。本記事で解説しようとしているのは、上記の中の「逆潮流なし」です。太陽光発電が需要家内で自家消費され、電力会社側に電力が流れない構成です。

一般的な場合では、太陽光発電の出力側に「逆潮流防止リレー(RPR)」を設置する他、「地絡過電圧リレー(OVGR)」も設置され、主遮断器と連動して制御します。この構成では、受電点(PAS・VCB側)と太陽光側の地絡検出のそれぞれが必要になりますが、地絡電流がどちらへ流れるかによって動作系統が複雑化します。したがって、高圧受電の地絡継電器と太陽光側の地絡継電器の保護協調を意識した設計が欠かせません。

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補足:「みなし低圧連系」

太陽光発電システムを電力会社の配電線に接続する際、通常は設備の受電電圧に応じて「高圧連系」または「低圧連系」に分類されます。一般に、10kW未満の太陽光発電設備は「低圧連系」として扱われますが、実際には複数のPCSを同一構内に設置して合計出力が10kW以上になるケースもあります。このような場合、本来は高圧連系の対象ですが、契約電力に対して太陽光発電設備の容量が小さいことや、電力会社との協議をすることなどの一定の条件を満たすことで「みなし低圧連系」として扱われる仕組みがあります。保護装置の簡略化が可能になり、設備投資コストの低減に繋がります。


地絡継電器(GR)の設置場所:太陽光設備側にも必要?

商用の受変電設備と太陽光発電設備は、PCS(パワーコンディショナ)を介して接続されます。T係長は、低圧母線にぶら下がるのMCCBの一つを太陽光発電設備とする場合によく出会っています(残念ながら高圧の太陽光発電の連系はまだ…)。この太陽光発電設備用MCCBフィーダに専用のGR+ZCTを設けることがあります(PCS側に設けられる直流地絡用とは別のものです)。もしくは、何か考えずに低圧分岐盤のようなフィーダに並列でフィーダを追加もしくは予備を転用した結果かもしれませんが。

一般的にはPCS内には直流側と交流側を絶縁するための変圧器があることが基本ですので、直流側地絡の波及への対策としての商用側のGR+ZCTは不要です。まれに小規模用ではトランスレスタイプもありますので、ご使用のPCSの取説をしっかりとご確認ください。では、一般的なタイプで専用のGR+ZCTを設ける場合は、何を保護するものでしょうか。難しく考える必要性はありません。この場合には、他のMCCBフィーダと同様で、盤外からPCSへの外線の地絡検出用です。


動作感度の考え方:PCSと漏れ電流を考慮

地絡継電器の感度は、通常の高圧需要家受電では 200mA~500mA が一般的ですが、太陽光系統では、PCSの漏れ電流にを考慮して設定を調整します。PCSはフィルタ回路の影響で常時微小な漏れ電流を流すため、感度を過敏にすると誤動作を起こすことがあるそうです。したがって、太陽光側GRは500mA~1A程度の整定とし、確実に事故電流を検出できる範囲に設定することが実務上多いです。この時、高圧受電用の主変圧器二次側に設置されている地絡継電器(上位側)が先に飛ばないように注意が必要です。


動作時間の設定:受電側GRとの協調がカギ

逆潮流なし構成では、太陽光側GRが先に動作し、受電側GRはバックアップ用として動作するよう設定しなければなりません。一般的な設定例としては、下記を目安に考えます。

  • 太陽光側GR:動作時間 0.3~1.0sec
  • 主変圧器二次GR:動作時間 1.0秒以上

ただし、保安協会や電力会社との協議で、動作時限の統一基準が求められる場合もあります。現地試験では必ず動作時間を確認し、時限協調の検証試験を行うことが推奨されます。特に、単純な設定値の比較だけではなく、使用する地絡保護継電器の動作時間や、補助リレーの動作時間(20ms)も考慮に入れて、綿密な動作時間協調が取れるように検討することが大切です。

注意点①:太陽光発電停止時のGR動作

「逆潮流なし」構成では、夜間など太陽光が停止している時でも、太陽光側GRは常時監視状態にある必要があります。もしPCS停止時にGRが動作不能となる構成だと、地絡事故を検出できません。したがって、監視電源を別途確保しておくことが不可欠です。通常は商用電源で制御電源としたり、直流電源から無停電電源としたりするのが一般的ですが、この点を怠ると、万が一の地絡時に保護動作せず、電路の焼損や波及事故を招く危険があります。

注意点②:高調波と誤動作の関係

PCSが発生する高調波成分は、ZCTを通じてGRに影響を与えることがあります。特に、地絡検出電流に含まれる高調波が誤動作要因になるケースが実務で確認されているそうです(T係長はまだ出会ったことが無いですが)。この対策として、高調波フィルタ付きGRを選定するのが望ましいです。
さらに、ZCTの設置配線もノイズ源から離すなど、配線設計段階から誤動作防止策を講じることが重要です。

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まとめ:地絡保護は「協調」がすべて

太陽光発電設備を高圧需要家に連系する際、最も注意すべきは「従来の地絡保護設計がそのまま通用しない」という点です。PCSを介した系統では、漏れ電流や高調波、さらには逆潮流の有無によって、地絡継電器の整定条件が大きく変わります。特に「逆潮流なし」構成では、太陽光側GRが先に確実に動作し、受電側はバックアップとして動作するよう、時限協調を取ることが不可欠です。また、夜間停止時の監視電源確保や、誤動作を防ぐためのZCT配線設計も見逃せません。太陽光は単なる「負荷」ではなく、系統に影響を与える一つの電源であることを常に意識し、商用側との保護協調を丁寧に設計することが、安全で信頼性の高い連系システムを構築する第一歩となります。

この記事を書いた人
T係長

30歳で制御設計の世界に飛び込み、未経験から10年以上にわたり、プラント設備の制御設計・更新・改造案件に携わってきました。これまで100件を超える現場経験を通じて、設計図面から制御盤、シーケンス制御、保護協調まで幅広い電気技術を磨いてきました。
保有資格は「第二種・第三種電気主任技術者」「第二種電気工事士」「基本情報技術者」。資格の枠にとらわれず、現場で困っている人を助けられる技術者であることを大切にしています。
このブログ「誠電気設計」では、初心者や若手エンジニアの方にもわかりやすく、実務に役立つ知識を共有しています。学びを通じて、読者とともに成長し続けることを目指しています。

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