オープン・スター・デルタ始動はどんな負荷に適している?

オープン・スター・デルタ始動【適応負荷は?】 機械制御

はじめに:モータ始動方式の基本

モータを動かすとき、いきなり全電圧をかけると、非常に大きな電流が流れます。この電流は「始動電流」と呼ばれ、定格運転時の6〜7倍にも達することがあります。近年は省エネへの要請からトップランナモータを使用することがあり、始動電流は定格運転時の8~10倍達することもあります。この過大な電流は、電源設備や配線に大きな負担をかけ、場合によっては電圧降下を引き起こし、他の機器に悪影響を及ぼす可能性があります。これを防ぐために、モータの始動には様々な工夫が凝らされています。

この始動電流を抑える方法として、代表的なものが「オープン・スター・デルタ始動」です。これは、始動時はスター結線で電圧を下げモーターの回転数が上がってからデルタ結線に切り替えて定格運転する方式です。本記事では、オープン・スター・デルタの基本的な動き、適応可能負荷、オープン・スター・デルタ始動の問題点など、実務に即して解説します。


オープン・スター・デルタ始動とは?接続図で確認!

オープン・スター・デルタ始動は、「スター結線」から、電流値がある程度安定した後に「デルタ結線」へと切り替える始動方式です。オープン・スター・デルタ始動では、モータのコイルを一時的にスター結線にすることで、コイルにかかる電圧を定格電圧の\(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}\)に下げます。これにより、始動電流を約 \(\displaystyle\frac{1}{3}\) に抑えることができます。

最初に6,88のコンタクタがONします
。
最初に6,88のコンタクタON
次に6のコンタクタがOFFし、42のコンタクタがONします。
次に6のコンタクタOFF→42コンタクタON

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【核心】オープン・スター・デルタ始動が適する「負荷」とは?

オープン・スター・デルタ始動とするためには、図3のように6端子が接続できる三相モータでなければなりません。基本的には 5.5kW 以上のモータであれば、6端子が接続可能です。つまり、5.5kW 未満の小さな負荷には適応不可です。その上で、特に軽負荷での始動が可能な負荷に適しています。例えば、ファンやブロワ、そしてポンプなどの慣性モーメントが小さい負荷です。

モータの端子箱(6端子)を示します。

オープン・スター・デルタ始動は、電流値が小さくなるため、始動時に得られるトルクも比較的弱くなってしまう特性があるためです。始動時に大きなトルクを必要とする負荷では、モータが回転できない(始動できない)ことがあります。選定には注意が必要です。


オープン・スター・デルタ始動が「不向き」な負荷

オープン・スター・デルタ始動は、上述のように、全てのモータに適用できるわけではありません。この方式は、始動時に大きなトルクを必要とする重負荷や高慣性負荷には向きません。例えば、破砕機、コンベア、圧縮機、そして昇降機などが挙げられます。これらの機器は、始動時に大きな慣性力や、高い負荷抵抗を乗り越えなければなりません。オープン・スター・デルタ始動では、始動時のトルクが不足し、モータがうまく加速できないことがあります。

トルク不足の状態でモータを動かし続けると、モータに過大な電流が流れ続け、過熱や焼損の原因となることがあります。また、スムーズに始動できない場合、始動時間が長くなり、頻繁な始動・停止を行う用途には不適当です。このような場合は、トルクを確保でき、より滑らかな始動が可能なリアクトル始動や、あるいはインバータの導入を検討する必要があります。


問題点と解決策

オープン・スター・デルタ始動は、そのシンプルな構成ゆえに、スターからデルタへの切り替え時に、モータと電源が完全に切り離される瞬断が発生します。この瞬断により、電圧0V、電流0A の空転(オープン)状態が生じます。ここから、デルタに切り替わる瞬間に通常の始動電流が発生します。これは原理的に仕方のない事です(ブレーカ選定を誤ると、この切り替え時にブレーカがトリップし、始動できないことがあります)。

問題なのは、このオープン状態の間に、慣性力が大きい大容量モーターや、高負荷な機器では、始動が不安定になることがあります。例えば、大型のポンプやファンを始動させる際、オープン・スター・デルタ始動では十分なトルクが得られず、モーターが規定の回転数に達する前に停止してしまう可能性があります。このような課題を解決するために、「クローズド・スター・デルタ始動」という始動方式があります。これは、スター結線からデルタ結線に切り替える際に、抵抗を一時的に挿入することで、電源とモータを切り離すことなく、スムーズに切り替えを行う方式です。


始動方式との比較:あなたの負荷に最適なのは?

始動方式主なメリット主なデメリット適応負荷
直入れ始動シンプル、安価始動電流が大きい軽負荷、小容量
オープン・スター・デルタ始動始動時の電源系統への影響が少ない始動トルクが小さい軽~中負荷
200Vなら18.5kW程度迄
400Vなら45kW程度迄
クローズド・スター・
デルタ始動
スムーズな切り替えコスト高、複雑大容量負荷
95kW程度迄

上記はあくまでも一般的なものです。例えば、プラントに設置しているトランス容量が負荷容量に比して大きい場合や、直接に接続する電源系統が非常に強く、突入電流による電圧降下が他設備や他需要家に悪影響を与えない場合には、特に始動方式を選ばず、直入れとすることは可能です。T係長は 100kW を超えるブロワを直入れ始動したプラントも見たことがあります。

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まとめ:あなたのモータに最適な始動方式を見つけよう

オープン・スター・デルタ始動は、小容量モータの始動において始動電流を抑えるのに非常に有効な選択肢となります。しかし、その特性を理解せずに重負荷に適用すると、モータの故障につながるリスクがあります。モータの始動方式の選択は、単に電流を抑えるだけでなく、モータの特性と負荷の種類を総合的に考慮することが最も重要です。オープン・スター・デルタ始動が適さない場合には、他の始動方法を検討しましょう。

この記事を書いた人
T係長

30歳で制御設計の世界に飛び込み、未経験から10年以上にわたり、プラント設備の制御設計・更新・改造案件に携わってきました。これまで100件を超える現場経験を通じて、設計図面から制御盤、シーケンス制御、保護協調まで幅広い電気技術を磨いてきました。
保有資格は「第二種・第三種電気主任技術者」「第二種電気工事士」「基本情報技術者」。資格の枠にとらわれず、現場で困っている人を助けられる技術者であることを大切にしています。
このブログ「誠電気設計」では、初心者や若手エンジニアの方にもわかりやすく、実務に役立つ知識を共有しています。学びを通じて、読者とともに成長し続けることを目指しています。

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