はじめに
電気設計を始めたばかりの方にとって、2E や 3E といった用語は難解です。そもそも大前提となる「過負荷」という言葉も、具体的に何が問題か掴みにくいものです。本記事では、過負荷と 2E、3E の違いや、それぞれの原因と対処法を解説します。この記事を読むことで、電気設計者として、負荷に合わせた適切な異常の早期発見と対策が取れるような回路設計が可能になります。
「過負荷」とは?
まず「過負荷」とは、電動機などの負荷に定格以上の電流が流れる状態を指します。
長時間の過負荷は機器の劣化や焼損、引いては短絡などを引き起こし、最悪の場合には火災に繋がります。そのため、過負荷を早期に検出し、負荷を停止させることが電気設計者の重要な責務です。プラント管理者は、必ず原因を究明し、除去しなければなりません。
過負荷が発生する主な原因は、基本的には文字通り「接続する負荷が多い」ことが原因ですが、実務上は、各負荷ごとにサーマルリレーやモータリレーで「過負荷」を検出することが多いです。実際の負荷について過負荷原因を考えましょう。
ポンプなどの誘導電動機の場合、異物の混入や液体の比重や粘土が大きすぎたり、軸受が損傷していたり、部品の摩耗していたりすることが原因になりやすいです。定期的な分解・清掃が必要です。また、頻度は稀ですが、過電圧になっていたり、60Hz地区において50Hz用の電動機を使ってしまうなどの設計段階でのミスも可能性はあります。
「2E」とは?
「2E」とは、前述の「過負荷」に「欠相」を加えたものです。「欠相」とは、三相負荷において、一相が断線などの異常となった状態です。この時、三相の平衡状態が崩れ、負荷に十分な電流が流れず、トルク不足となり、モータの動作が不安定になったり、起動が出来なかったりします。その他、異音や振動が発生し、これにより、端子のゆるみや据え付けのズレなどが起こる可能性が高くなる他、機器の損傷やケーブルの焼損に発展する可能性があるため、プラント管理者は、必ず原因を究明し、除去しなければなりません。
過負荷については前述のとおりです。一方、2Eが発生する主な原因は「ブレーカやコンタクタの接点不良・劣化による断線」や「ケーブルの劣化による断線」が挙げられます。各負荷ごとにサーマルリレーやモータリレーで早期に2Eを検出し、負荷を停止し、原因を除去することが必須です。
「3E」とは?
「3E」とは、前述の「過負荷」、「2E」に「反相」を加えたものです。「反相」とは、三相負荷において、接続順序が誤って逆になり、モータが逆回転してしまう現象です。モータが逆回転することで、例えばファンであれば、排気ファンとして使用したいのに給気ファンとなってしまうということです。排煙装置としては全く機能せず、プラントにおける重大な瑕疵となってしまいます。コンベアなどの搬送装置でも全く役割を果たすことができません。回転方向が重要な負荷においては、必ず反相を検出し、迅速に検出し、負荷を停止し、原因を除去することが求められます。
反相となる原因は「結線ミス」ですが、基本的には「ローテーションメータ」や「検相器」と呼ばれる機器で、据付け、結線の際に確認するので、ここで問題が見過ごされることは通常の現場ではありえないとも考えられます。しかし、上位側の配電盤の更新によって、結線が変更されたり、系統切替時に相順が一致していなかったりすると、反相となる場合がありますので、「あり得ない」と安易に考えずに保護方法を検討するのが電気設計者の責務です。
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故障検出1:サーマルリレー
サーマルリレーは内部のヒータ線が異常時に発熱し、ヒータ線が巻き付けられているバイメタルへと伝わり、湾曲することで接点が回路する原理です。「熱動型」と呼ばれています。標準型のサーマルリレーはおおむね下記条件で動作します。
- 動作値は電流整定値の 115% 程度
- 電流値制定の 600% を超える電流が流れたとき 6秒 程度
- 電流整定値の 200% を超える電流が流れたとき 40秒 程度
近年トップランナ―モータへの更新が行われる中で、従来のモータより始動電流が大きくなっています(8倍~10倍)。この大きな始動電流で過負荷検出しないように注意が必要です。また、フライホイール付のモータで始動時間が長くなってしまう時にも、過負荷検出しないように注意が必要です。いずれもモータが始動不可となってしまいます。このような場合、直入始動から Y-Δ始動方式 へ変更したり、遅動型(飽和リアクトル付)サーマルリレーを使用したりすることが大切です。
遅動型サーマルリレーを使用した場合はおおむね下記の条件で動作します。
- 動作値は電流整定値の 115% 程度
- 電流値制定の 600% を超える電流が流れたとき 15秒 程度
- 電流整定値の 200% を超える電流が流れたとき 60秒 程度
違いは明らかです。電気設計者として、適切な機器を選定しましょう。
補足情報です。サーマルリレーは過負荷検出のための機器ですが、「2Eサーマルリレー」という商品もあります。3E(反相)に関しては保護する場合には、サーマルリレーのみでは不可能です。次項で紹介するモータリレーを使用します。
故障検出2:モータリレー
モータリレーも基本的にはサーマルリレーと同様の JEM1357 に適合しているので、動作的には同様若しくはそれ以上の機能を有していますが、モータリレーは電流センサや電子回路を用いて過負荷、欠相、反相の異常をリアルタイムで検出し、即座に遮断信号を出す高機能なリレーです。さらに、起動時ロック機能もあり、始動電流によるトリップを回避できるほか、細かい設定が可能です。
良いこと尽くめにも思えますが、サーマルリレーが主回路の電磁接触器とセットで設置されるのに対して、モータリレーは、カレントコンバータを用いて主回路電流値を、主回路電圧要素を機器に入力する必要性があります。また、モータリレーへの供給電源は最大でも 210V ですので、420V 負荷の場合には新たに変圧器を設置して降圧する必要があります。周辺機器が増えるため、配線や保守の手間が増えまてしまいます。電気設計者として、必要な保護レベルを見極め、仕様を詰めることでお客様に最適な電気設備を目指しましょう。
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まとめ
過負荷、2E(過負荷+欠相)、3E(過負荷+欠相+反相)は、いずれもモータや機器の重大な故障を引き起こす要因です。各異常の発生原因や特性を理解し、適切な保護機器(サーマルリレーやモータリレー)を選定することが、電気設計者としての基本であり責務です。本記事を通じて、異常の早期発見と確実な対処ができる設計力を高めていただければ幸いです。

