電験三種機械:現場から読み解く!三相変圧器の「並列運転条件」5ポイント!

電験三種機械 三相変圧器の並列運転条件5つ 資格

はじめに

三相変圧器の「並列運転条件」は、電気の専門家にとって必須の知識でありながら、テキストに並ぶ複雑な条件を前に「暗記するしかない」と諦めてしまう受験者も少なくありません。T係長もかつてはそう思っていました。しかし、現場で日々電気設備に触れているわれわれにとっては、実は丸暗記に頼る必要は全くないものだったのです。三相変圧器の現場での業務を振り返れば、なぜその条件が必要なのか、その深い意味を現場感覚で理解することができます。この記事では、電験三種の合格に必要な知識として、三相変圧器の並列運転条件を、暗記ではなく理解に重点を置いて解説します。この記事を読めば、日常の業務と電験三種の試験勉強がより実践的に結びつくこと間違いなしです!


並列運転が求められる理由

私たちの関わる高圧需要家の設備は、1台の「主変圧器」と呼ばれる6.6kVを210Vや420Vのの電気機器の使用電圧に降圧します。しかし、需要家の規模によっては、主変圧器が複数台あることもあります。今回、この記事での話の中心になるのは「並列運転」、いわゆる「パラ・ラン(パラレル・ランニング)」です。つまり、「変圧器二次側の母線が常時連結されて運転」しているということです。

変圧器を並列運転させる主な目的は、電力供給の柔軟性と信頼性を高めることにあります。具体的には、設備増設などで負荷が増大した際、既存の変圧器に加えて同じ容量の変圧器を追加することで、総容量を容易に増加させることが可能です。また、並行運転中のうち一台が故障しても、残りの変圧器で一部の供給を維持し、全停電を防ぐという信頼性(冗長性)の確保にも繋がります(長時間の過負荷運転は避けなければなりませんが…)。


並列運転条件5ポイント

しかし、この並列運転を行う上で、絶対に破ってはならない「基本ルール」が存在します。このルール、すなわち並列運転条件を守らなければ、変圧器の二次側端子間に巨大な電位差が生じ、変圧器間で負荷とは無関係の無効循環電流が流れ出してしまいます。この循環電流は巻線を過度に加熱させ、最終的には焼損という重大事故を引き起こすため、並列運転条件の遵守は必須なのです。並列運転条件は全部で5つあます。順に確認していきます。

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1.極性が一致していること

三相変圧器を並行運転させる際、極性の一致は、単相変圧器と同じく最も基本的な安全条件であり、絶対に守らなければなりません。「極性」を考える場合、三相では**結線($\text{Y}$または$\Delta$)の向きと、それに伴う端子記号**の取り出し方が重要になります。

もし、並列運転する二台の変圧器の極性が逆になっているとどうなるでしょうか。二次側を接続した瞬間、極性が逆であるため、変圧器の二次巻線が作り出す電圧が互いに打ち消し合うどころか、加算されてしまいます。単相変圧器の場合、極性が逆だと二次側の閉回路に定格電圧のほぼ2倍の電圧がかかります。三相変圧器でも同様に、接続点の端子間で大きな電位差が生じ、これが原因で瞬間的に大きな循環電流が流れます。この電流は、変圧器の保護装置が動作する間もないほどの大きさに達することが多く、巻線が瞬時に過熱・焼損し、最悪の場合には変圧器そのものが破壊に至る致命的な事故につながります。

2.変圧比が一致していること

巻数比とは、変圧器の一次側巻数と二次側巻数の比 \( a = \displaystyle\frac{N_1}{N_2} \) で表されます。並列運転を行う変圧器同士は、この巻数比(変圧比)が一致していなければなりません。もし巻数比がわずかでも異なると、たとえ一次側の印加電圧が同じであっても、二次側に誘起される電圧の大きさに差(電位差)が生じてしまいます。

この二次側で生じたわずかな電圧差が、変圧器の二次巻線からなる閉回路に変圧器間の無効循環電流を流す原因となります。この循環電流は負荷電流とは無関係に流れ、変圧器の巻線を過熱させ、効率を低下させるだけでなく、最悪の場合には焼損事故につながる可能性があります。

したがって、変圧器を安全かつ効率的に並列運転させるためには、定格電圧の一致を確保するために、両変圧器の巻数比は厳密に一致している必要があります。とは言え、わざわざ一致させないような仕様とすること自体が考えにくいので、つい「暗記」から漏れてしまいそうになります。私たち現場エンジニアは、注意しなければならないですね。

3. 変圧器の%Z(パーセントインピーダンス)が等しいこと

さらに、%Z(パーセントインピーダンス)が等しいことも極めて重要です。「インピーダンス」はつまるところ「抵抗」ですから、ここに「電圧降下」が発生します。先述2で記載した通り、「電圧」も同様になる必要がありますが、%Zが異なると、電圧降下特性が異なるため、各変圧器の二次側の電圧に電位差が生じ、循環電流が流れて、焼損してしまいます。原理的には、並列回路におけるオームの法則を考えれば良いでしょうか。抵抗値が小さい方に大きな電流が流れようとすることを考えれば、簡単です。

%Zを同一にすることで、それぞれの変圧器の容量に逆比例した負荷電流の分担を行うことができます。電験三種の受験としては、合わせてこの「変圧器容量の逆比で負荷電流を分担する」ことは覚えておきたいですね。

%Zに関しては受変電用の変圧器カタログには必ず書いてありますが、それは「実際の値」ではありません。並列運転する変圧器となる場合には、試験成績書をしっかりと確認してから、接続し、運用を開始することが、運用後のトラブルを避けるポイントです。

また、変圧器メーカ様への見積もりを依頼する場合に、「変圧器の並列運転をする/しない」旨をお伝えすることは必須の事項です。実際に、問い合わせを受けたことのある電気設備設計者も多いかもしれません。T係長も、この仕事を初めて2年目の頃、初めて担当した並列運転案件の時に、確認の連絡をされたことを、おぼろげながら今でも覚えています。

4. 抵抗と漏れリアクタンスの比が等しいこと

変圧器の並行運転条件として、百分率インピーダンスの絶対値が等しいことは、先述の通り、負荷電流の大きさが定格容量に比例して分担されるために必須です。しかし、これだけでは効率的で安全な運転は保証されません。もう一つの重要な条件が、変圧器の内部インピーダンスZ を構成する抵抗 \(r\) と漏れリアクタンス \(x\) の比 \(\) が、並行運転する変圧器で等しいことも求められます。スカラ量で表される%Zに対して、\( \displaystyle\frac{r}{x} \)が等しいことはベクトル量でも等しいことを示しています。これで、電気的に「厳密に一致する」と言えるのです。

この \( \displaystyle\frac{r}{x} \) 比は、インピーダンスの位相角を決定します。もし並列運転する変圧器間でこの比が異なると、二次側で誘導された電圧が負荷に流れる際の電圧降下のベクトルの向きが異なってしまいます。この結果、各変圧器が分担する電流の位相(力率)に差が生じ、変圧器間で循環電流が流れてしまいます。この循環電流は、有効電力の分担を大きく狂わせるほどではありませんが、無効電力を偏らせ、変圧器の銅損を増加させます。

\( \displaystyle\frac{r}{x} \)に関しても受変電用の変圧器カタログには書いてあることが多いですが、それは「実際の値」です。%Zと同様に並列運転する変圧器となる場合には、試験成績書をしっかりと確認してから、接続し、運用を開始することが、運用後のトラブルを避けるポイントです。同様に「変圧器の並列運転をする/しない」旨も明確にしましょう。

5. 相回転と位相変異が一致していること

三相変圧器を並列運転させるためには、相回転(相順)位相変位(角変位)という二つの要素が、接続する全ての変圧器で完全に一致していなければなりません。

相回転(相順)の一致

相回転とは、三相交流の電圧や電流の相が変化する順番(例:U→V→W)を指します。もし並列運転する二つの変圧器の相回転が逆である場合、二次側の接続点では、ある瞬間に同相であるべき電圧が、次の瞬間には大きな位相差を持つことになります。この状態では、二次側の端子間で瞬間的に大きな電位差が生じ、極性の不一致と同様に巨大な循環電流が流れ、変圧器が瞬時に焼損する事故を引き起こします。

位相変位(角変位)の一致

位相変位(角変位)とは、変圧器の結線方法(Δ-Y結線、Y-Δ結線など)によって生じる、一次側と二次側の線間電圧の位相差のことです。先に述べたように、この位相変位が異なると、二次側の閉回路に位相差による電圧の不均衡が生じます。この不均衡が、変圧器間に無効電力の循環電流を発生させ、巻線を過熱させたり、機器の定格を逸脱した負荷分担を引き起こしたりします。

したがって、「相回転」と「位相変異」の2つの条件が完全に一致していること、すなわち同じ結線グループ(組)に属し、かつ正しい相順で接続されていることが、三相変圧器の並行運転の成否を分ける最も重要な要件なのです。

現場での確認ポイント

基本的には最初の仕様において、異なる結線をとすることはほぼないので、三相変圧器の場合、極性は巻線の接続方法(結線)と端子記号の振り方に注意すれば大丈夫です。例えば、Y-Δ結線同士で並列運転する場合、巻線が同じように巻かれていても、片側の変圧器の二次側三相の接続(U,V,W)が、もう一方の変圧器に対して逆相になるような形で誤接続されていないかを確認する必要があります。

極性や相順の間違いを防ぐためにも、現場では単なる端子記号の一致だけでなく、事前に低電圧を印加して二次側の各相電圧の大きさ(定格電圧条件の確認)と、相順が一致しているか(角変位条件の一部)をテスターや検相器(相回転計)で確認することが、安全管理上不可欠な手順となります。

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まとめ:現場感覚で身につける三相変圧器の並列運転条件

電気のプロとして、そして電験三種合格を目指す者として、三相変圧器の並列運転条件は、丸暗記ではなく原理から理解することが重要です。この知識は、設備容量の増加や信頼性確保のために不可欠な「パラ・ラン」を、安全かつ効率的に行うための設計図となります。

並列運転を成功させるための五つの条件は、詰まるところ「接続する二次側の各端子間に、電圧の大きさ電圧の向き(位相)の差をゼロにすること」を目指しています。

条件の種類条件の要点差が生じた場合の結果
大きさの条件変圧比(巻数比)が一致すること電圧差による無効循環電流が発生し、巻線が過熱・焼損する。
大きさの条件百分率インピーダンス(%Z)の絶対値が等しいこと負荷分担が容量比にならず、%Zの小さい変圧器が過負荷になる。
向きの条件極性が一致すること定格電圧の約2倍が加算され、瞬時に巨大な短絡電流が流れ、変圧器が破壊。
向きと効率の条件抵抗と漏れリアクタンスの比 r/x が等しいこと無効電力の循環電流が発生し、銅損が増加し過熱・効率低下を引き起こします。
三相特有の向きの条件相回転(相順)と位相変位(角変位)が一致すること相回転の不一致は極性逆転と同様の瞬時事故に繋がります。角変位の不一致は無効循環電流を引き起こす。

特に三相変圧器特有の「相回転」や「位相変位」の条件は、結線図からその位相のズレを理解することで、Y-Δ結線とΔ-Y結線のように結線グループが異なる変圧器同士は絶対に並行運転できないことが、感覚的に腑に落ちるはずです。

現場では、設計段階で「並列運転の有無」を明確にし、運転開始前には低電圧印加試験検相器(相回転計)を用いて、相の結び方が正しいか、小さな電位差がないかを厳密に確認するプロセスが、重大事故を防ぐ鍵となります。現場の安全を守るため、そして電験三種合格のために、これら五つの条件を原理から理解し、勉強にも日々の現場の業務にも活かしていきましょう。

この記事を書いた人
T係長

30歳で制御設計の世界に飛び込み、未経験から10年以上にわたり、プラント設備の制御設計・更新・改造案件に携わってきました。これまで100件を超える現場経験を通じて、設計図面から制御盤、シーケンス制御、保護協調まで幅広い電気技術を磨いてきました。
保有資格は「第二種・第三種電気主任技術者」「第二種電気工事士」「基本情報技術者」。資格の枠にとらわれず、現場で困っている人を助けられる技術者であることを大切にしています。
このブログ「誠電気設計」では、初心者や若手エンジニアの方にもわかりやすく、実務に役立つ知識を共有しています。学びを通じて、読者とともに成長し続けることを目指しています。

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