はじめに:極数切り替えモータって何?
我々電気エンジニアが関わるプラント、工場の設備の中には、速度を切り替えて使う機械が数多く存在します。例えばブロワ、ポンプ、クレーンなどは、必要に応じて回転数を変化させて動作しています。これらの機械に使われている仕組みの一つが「極数切り替えモータ」です。
T係長としては、インバータ(VVVF)に取って代わられ、最近はめっきり見ることも少なくなった印象でしたが、2024年現在にも、現役稼働中の極数切り替えモータに出会いました。こういう現代ではニッチとなってしまった技術こそ、どこかに資料が残っているべきだというのが考えです。
極数切り替えモータは、電源の周波数を変えずに速度を変えることができるモータです。一般的には2段階や3段階の速度切替が可能で、シンプルながら確実に回転数を制御できます。VVVFのような高価で複雑な装置を用いないため、安定した性能と低コストが特徴といえるでしょう。
本記事では、極数切り替えモータの基本的な仕組みやメリット・デメリットを解説します。さらに、インバータとの違いや、代表的な結線の特徴についても整理し、導入や更新を検討する際の判断材料として役立つ知識を提供します。
そもそも「極数」って何?極数を切り替えると速度が変わる仕組み
モータの「極数」とは、固定子に形成される磁極の数を指します。磁極はN極とS極が対になって存在し、この数がモータの回転速度を決定づけます。例えば2極モータは高速回転、8極モータは低速回転というように、極数が増えると回転数は下がります。モータの回転速度は次の式で表されます。
N[min-1] \( = \displaystyle\frac{120f}{p} \)
N:回転数[min-1], f:周波数[Hz], p:極数[極]
この式から分かる通り、周波数を変えずに極数を切り替えることで、異なる速度を得ることが可能となります。例えば 50Hz で2極なら 3000[min-1]、4極なら 1500[min-1] となります。つまり、極数切り替えモータは固定子の巻線を切り替えることで、内部に形成される磁極の数を変化させています。これにより周波数は同じでも回転数が変化し、シンプルな機構で複数の速度制御を実現できるのです。この特徴こそが、現場で長く使われてきた理由といえるでしょう。
スポンサーリンク
極数切り替えモータのメリット・デメリット
極数切り替えモータの最大のメリットは、構造がシンプルでコンタクタによる巻線切替だけで、速度を変えられるため、設備コストを大幅に抑えられることです。特に中小規模のファンやポンプでは、このメリットが重宝されています。VVVFとするほど繊細な制御は必要なく、コストパフォーマンスが悪いのです。
また、低速時に高いトルクを維持できる点も大きな強みです。クレーンやエレベータのように重い荷物を動かす用途では、低速での高トルクが不可欠となります。そのため、極数切り替えモータは高トルクを必要とする産業機械に広く利用されてきました。さらに、場合によってはインバータ制御よりも効率が高く、省エネ性に優れることもあるようです。T係長個人の見解としては、VVVF制御では回生エネルギーを有効活用できるので、効率と省エネ効果に焦点を当てれば、軍配はVVVFに上がります。
一方のデメリットとして、速度切替の選択肢が限られる点が挙げられます。一般的には2段階または3段階しか切替できず、細やかな速度制御は困難です。また、速度を切り替える際には急激な変化が発生し、機械的なショックが大きくなる可能性があります。さらに、巻線の結線切替が必要なため、インバータ駆動に比べて配線が複雑化します。その他、現在極数切り替えモータを製造する国内メーカは住友重機械工業や富士電機程度と、少ないことです。選択肢が限られるだけではなく、今後のサポート体制にも懸念出ますし、競争原理からコスト増は受け入れざるを得なくなります。
インバータ制御との違いを徹底比較!選ぶならどっち?
インバータ制御と比較すると、極数切り替えモータは速度制御が段階的で柔軟性に欠けます。しかし、装置がシンプルで導入コストが低いため、用途によっては非常に有効な選択肢となります。特に一定の速度切替で十分なケースでは、インバータより有利に働くことがあります。
| 項目 | 極数切り替えモータ | インバータ制御 |
|---|---|---|
| 速度制御 | 2~3段階のみ | 無段階で制御可能 |
| コスト | 安価 | 高価 |
| 制御装置 | 不要 | 必要(インバータ) |
| 配線 | 複雑 | シンプル |
| 用途 | ブロワ、ポンプ、クレーン | コンベア、精密機械、空調設備 |
極数切り替えモータは、シンプルな切替で済む用途に適しています。例えば、送風機やポンプのように数段階の速度で十分な場合です。一方、インバータ制御は繊細な速度制御や位置決めが必要な場面や、省エネルギーを重視する場面で特に力を発揮します。それぞれの特性を理解し、現場のニーズに合った選定が重要です。
極数切り替えの配線
極数切り替えモータの代表的な結線方式を紹介します。1つの巻線を工夫して接続し、2つの異なる極数を実現できる方式です。この結線を用いることで、1台のモータで2段階の速度を得られるようになります。

巻線の途中から新たに引き出し、端子を設けているのが特徴です。実際には、定トルクにしたいのか、定速度にしたいのかによって、端子番号は変わります。通常の低速運転と呼ばれる場合は、下記の通り、MC1がONし、デルタ結線となります。

一方で、高速運転する場合には、MC2とMC2AがONとなり、これにより、モータは構造を変えることなく柔軟に速度を切り替えることができます。

ただし、このモータを扱う際には注意が必要です。まず、運転中に結線を切り替えるような場合、切り替え時に大きな電圧が発生し、コンタクタの損傷が起きる可能性があります。定格電流だけではなく、オープン・スター・デルタ結線に類するようなコンタクタ選定をしなければなりません。また、その結線方法を誤ると、想定外の極数で回転し、トルク不足や異常発熱の原因となります。また、高圧モータでは配線工事に高い安全性が求められるため、必ず専門知識を持つ電気設計者が作業を行う必要があります。「コンタクタの選定」と「結線の確認」が最も重要なポイントです。
スポンサーリンク
まとめ:極数切り替えモータは今後も必要とされるか?
本記事では、極数切り替えモータの仕組みやメリット・デメリット、インバータとの違い、さらにダランダー結線の特徴について解説しました。シンプルで安価に速度制御できる点は、今なお大きな魅力といえます。
確かにインバータの普及により、可変速制御の主役はインバータ制御に移りつつあります。しかし、極数切り替えモータの「シンプルさ」と「高トルク」という特性は、今後も特定の分野で必要とされ続けるでしょう。特にコストや耐久性を重視する用途では、その価値は揺らぐことはありません。
今後の設備選定では、極数切り替えモータとインバータ制御のそれぞれの強みを正しく理解することが重要です。適材適所で使い分けることで、効率的で信頼性の高い設備運用が可能となります。これからも現場では、両者が共存しながら活躍していくことでしょう。私たち電気設計者も、柔軟に対応できるように日頃から準備しておかねばなりませんね。

