液式・金属式、あなたはどっち?二次抵抗始動器の種類と選び方とVVVFとの比較

二次抵抗始動のメリット!VVVFとの比較 機械制御

はじめに:巻線形誘導電動機の始動方式、その本質を問う

クレーンやエレベータに代表される大容量モータやポンプの円滑な動作は、産業界における生産性および安全性の根幹をなす非常に重要な要素です。その安定稼働には、モータが静止状態から円滑に加速する「始動」のプロセスが極めて重要となります。今回、私たちが焦点を当てる二次抵抗始動は、巻線形誘導電動機に特化した始動方式であり、その目的は明確です。それは、始動時の過大な始動電流を抑制し、同時に必要な始動トルクを確保することにあります。本記事では、この二次抵抗始動がもたらす技術的メリットを深く掘り下げ、専門的知見に基づいて解説します。さらに、補足として現代の主流であるVVVFインバータ方式との相違点を解説します。


二次抵抗始動のメカニズム:トルクと電流の制御理論

二次抵抗始動の動作原理は、巻線型誘導電動機のトルク特性に立脚しています。二次抵抗回路とは、巻線形誘導電動機の始動時に、その回転子(二次巻線)に接続される抵抗器の回路を指します。かご形誘導電動機には使用できません。この回路の主な目的は、始動時の電動機の特性を改善することです。

具体的には、抵抗を挿入することで、始動時の大きな突入電流(始動電流)を抑制し、電源系統への負担を軽減します。同時に、抵抗によって電動機のトルク特性が変化し、始動時に最大のトルクを発生させることが可能になります。これにより、重い負荷でもスムーズに電動機を始動させることができます。電動機の回転数が上昇するにつれて、抵抗は徐々に短絡され、最終的に二次巻線は短絡状態に戻ります。このシンプルな仕組みが、電動機に優しい、効率的な始動を実現するのです。

誘導電動機のトルクは、その「すべり」に依存する特性を有しており(トルクの比例推移)、二次回路の抵抗値を変更することで、電動機が最大トルクを発生する状態に最適化します。これにより、高慣性負荷や高負荷時においても、確実かつ力強い始動を実現します。また、挿入された抵抗器は回路インピーダンスを増加させるため、電源から供給される始動電流を効果的に抑制し、系統への影響を最小限に抑えます。

始動直後は最大抵抗値として、トルクを大きくする。
始動直後は最大抵抗値とする
回転数が上昇したら抵抗値を小さくする
回転数が上昇したら抵抗値を小さくする
回転数が上昇したらさらに抵抗値を小さくする(最終的には短絡する)
回転数が上昇したらさらに抵抗値を小さくする(最終的には短絡する)

液式抵抗器の特性と応用

液式抵抗器は、二次抵抗始動に用いられる抵抗器の一種であり、特に500kW以上の大容量の電動機や、非常に滑らかな始動が要求される用途に採用されます。この方式は、電解液(通常は炭酸ナトリウム水溶液)を満たしたタンク内に配置された電極間の距離を調整することで、抵抗値を連続的に変化させる仕組みです。

電極が近づくにつれて抵抗値が減少し、最終的に電極が接触することで回路を短絡させます。液式抵抗器の最大の利点は、抵抗値が連続的に変化するため、電動機のトルクと電流の変動を極めて小さく抑え、機械的なショックや電気的なストレスを最小限に抑えた、理想的な滑らかな加速を可能にすることです。

しかしながら、液体を使用するため、構造が複雑であり、定期的な液の補充や水質管理が必要となります。また、凍結防止や電解液の温度上昇対策も求められるため、メンテナンスの頻度は比較的高い傾向にあります。これらの特性から、液式抵抗器は、クレーン、エレベーター、大型ポンプ、送風機など、円滑な始動が不可欠な設備に広く利用されています。

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金属抵抗器(グリッド式始動抵抗器)の特性と応用

金属抵抗器は、二次抵抗始動に最も一般的に使用される抵抗器です。この方式は、鋳鉄やニクロム合金などの抵抗体を、放熱効果を高めるためにグリッド(格子)状に加工したものです。複数のグリッドを組み合わせて抵抗バンクを形成し、接触器やスイッチでグリッドを段階的に短絡させることで、抵抗値を非連続的に変化させます。

液式抵抗器のような連続的な抵抗値調整は不可能ですが、その代わりに構造がシンプルで非常に堅牢であり、保守が容易で信頼性が高いという大きな利点を持ちます。金属抵抗器は、水分や液漏れの心配がなく、過酷な環境下でも安定して動作します。また、製造コストが比較的安価であるため、広範な産業用途に適用されます。

ただし、抵抗値が段階的に変化するため、始動時に電流やトルクがわずかに変動する場合があります。このため、繊細な起動が要求されるような負荷ではなく、一般的な産業用機械、例えばコンベア、ポンプ、圧縮機などの駆動に広く採用されています。容量も 55kW~400kW程度の大容量負荷に用いられます。


現代の主流VVVFインバータ方式との比較

今日、産業界ではインバータ(VVVF)方式が主流となりつつあります。この方式は、半導体技術を用いて電動機への供給電圧と周波数を自在に制御することで、広範囲にわたる精密な速度制御を可能にします。2000年初期の段階ではインバータの性能も安定していなかったため、二次抵抗始動の採用が多かったです。現在はインバータがの性能も安定してきたので、徐々に主流になってきました。

二次抵抗始動が「始動」という一点の最適化に特化しているのに対し、インバータは「始動から停止までの全域制御」を可能にする点で根本的に異なります。インバータは省エネルギー効果や生産性向上に貢献しますが、初期投資コストが高く、制御回路が複雑です。対照的に、二次抵抗始動はシンプルかつ安価に高い始動性能を提供します。したがって、用途に応じた最適な方式の選択が、技術者にとって重要な判断となります。

項目二次抵抗始動インバータ
制御始動時のみ始動から停止までの全領域
主な機能高トルク始動
始動電流抑制
速度・トルクの精密制御
省エネ
採用電動機巻線形誘導電動機かご形誘導電動機
巻線形誘導電動機
同期電動機
コスト比較的安価比較的高価
構造シンプル、堅牢複雑
エネルギー効率始動時に抵抗損が発生運転効率が非常に高い
主な用途クレーン、大型ポンプ、コンベアなど定速運転が主となる設備電車、エレベーター、工作機械など可変速運転が必須の設備
二次抵抗始動とVVVFインバータの比較表

まとめ:最適な始動方式の選択

二次抵抗始動インバータは、それぞれ異なる技術的思想に基づいています。クレーンや大型ポンプなど、始動時に高いトルクを必要とし、定速運転が主となる用途には、シンプルで信頼性の高い二次抵抗始動が依然として有効な選択肢です。一方、運転中に速度やトルクを頻繁に制御する必要がある用途には、インバータが最適です。技術者は、システムの要件、初期コスト、および運用上の利点を総合的に評価し、最適な始動方式を決定できるようにしましょう。

T係長は現場の保守運用者から「既設機器で慣れているからインバータはやめて欲しい」という話もよく聞きます。インバータの省エネ性能は時代の要請もあり、決して軽視することはできません。必要な新規設備の導入は教育体制なども整えつつ、より良い設備を導入したいものですね。

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この記事を書いた人
T係長

30歳で制御設計の世界に飛び込み、未経験から10年以上にわたり、プラント設備の制御設計・更新・改造案件に携わってきました。これまで100件を超える現場経験を通じて、設計図面から制御盤、シーケンス制御、保護協調まで幅広い電気技術を磨いてきました。
保有資格は「第二種・第三種電気主任技術者」「第二種電気工事士」「基本情報技術者」。資格の枠にとらわれず、現場で困っている人を助けられる技術者であることを大切にしています。
このブログ「誠電気設計」では、初心者や若手エンジニアの方にもわかりやすく、実務に役立つ知識を共有しています。学びを通じて、読者とともに成長し続けることを目指しています。

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