第三種電気主任技術者(以下、電験三種)は、電気に関する国家資格の中でも特に人気があり、
資格を取得すれば、転職やキャリアアップにも直結する強力な武器です。しかし、試験の難易度は決して低くなく、独学での合格には戦略が必要です。近年は対策本やYouTube、アプリなどさまざまな勉強方法があり、独学では非常に戦略が立てにくい状況です。そしてその戦略は、学習者の性格や勉強に確保できる時間などにより変化しますので、より一層問題を難しくしています。この記事では、あなたに合った戦略をご提案します。もう迷うことはありません!
電験三種の概要と学習の前提知識
まず前提として、電験三種は「理論」・「電力」・「機械」・「法規」の4科目から構成されます。試験は、上期(7~8月)と下期(2~3月)の年 2回 、CBT方式によって実施されます(従来の筆記方式も実施されています)。受験日時を自由に選べる形です。
この 4科目 すべてに合格しなければなりません。従って、合格のためには科目ごとのバランスの取れた学習が求められます。とは言え、1回の試験で全ての科目に合格しなくても大丈夫です。「科目合格」という制度があり、3年間 で 4科目 を合格すれば良いのです。つまり、複数年で計画的に合格することも可能なのです。
T係長はかつての 年1回 実施の筆記試験方式時代に合格したので、電験三種のCBT方式の受験経験はありませんが、その他の試験でCBT方式での受験を経験しました。日程が自由である点、合否がすぐに分かる点がとても便利だと考えています。これから受験される方にも、CBT方式での受験をおすすめします。
戦略タイプを見極める
電験三種を受験すると決めたら、必ず「1年以内に合格する」ことを意識してください。資格取得のための勉強が長期化してしまうのは、仕事にも、家庭生活にも悪影響です。必ず「1年(2回受験)」です。この気持ちを固めた上で、以下の質問に Yes/No で答えてください。
①人の顔と名前を覚えるのは得意だ
Yes:③へ No:②へ
②残業時間は 2時間 以上だ
Yes:④へ No:③へ
③通勤は、毎日 30分 以上、電車に乗る
Yes:戦略2へ No:②へ
④週2回以上、1時間じっくり勉強できる日がある
Yes:戦略1へ No:戦略3へ
特に社会人にとって重要なのは、「無理のない学習戦略」です。仕事と家庭の両立の中で、いかに継続するかが最大のポイントです。下記の戦略1と2はいずれも自分に合っているものを選ぶことが大切ですから、臨機応変に使い分けしてみるのも良いでしょう。
戦略1:テキストじっくり型
電験三種を独学で勉強する際、テキストベースの学習は非常に有効ですが、進め方を間違えると効率が落ちてしまいます。まず大切なのは「一冊を繰り返す」ことです。複数のテキストに手を出すと内容の重複や表現の違いで混乱し、結果として知識が定着しにくくなります。信頼できるテキストを一冊選び、それを繰り返し読むことで理解を深めましょう。
おススメのテキストの紹介は後日、記載します。
次に意識したいのが「手を動かす」学習です。読むだけでは知識は定着しません。公式や計算問題は、自分の手で何度も解くことで、初めて身につきます。また、要点をノートにまとめることで、情報が整理され、復習もしやすくなります。通勤やお昼休憩など、スキマ時間を活用して、復習しましょう。
戦略2:動画でさっくり型
いきなり残念なお知らせとなってしまいますが、動画講義はあくまで補助教材です。動画を見るだけでは合格する力は身につきません。電験三種を動画講義で学ぶ場合、理解しやすさや学習のハードルの低さが大きなメリットです。難解な理論や計算の流れを視覚的に学べるため、特に初心者には効果的です。しかし、動画視聴だけで満足してしまう「受け身の学習」には注意が必要です。合格に必要なのは「知識の定着」と「実践力」であり、
まず重要なのは、動画を観ながら必ずノートを取り、重要な公式や考え方を自分の言葉でまとめることです。これにより、視聴中の集中力が高まり、記憶にも残りやすくなります。また、動画で学んだ内容をそのままにせず、すぐに過去問でアウトプットする習慣をつけましょう。理解したつもりでも、問題を解けなければ意味がありません。
さらに、繰り返し視聴やスキマ時間の活用も有効です。同じ講義を何度も見ることで理解が深まり、復習にもなります。例えば、夜じっくり動画を視聴しながら学習し、翌朝の通勤電車で昨晩学習した動画を再視聴するのが効果的です。ちなみに、音声のみ聞き、映像を思い浮かべるような勉強方法だと、さらに定着度が上がります。とは言え、動画講義はあくまで補助教材であることに注意をしてください。アウトプット学習との併用が合格への鍵となります。繰り返しになりますが、動画講義はあくまで補助教材であることに注意をしてください。アウトプット学習との併用が合格への鍵となります。
戦略3:ライフスタイル見直し型
電験三種は、生半可な気持ちでは合格できません。このままでは、だらだらと受験回数を重ね、お金も時間も無駄にしてしまう可能性が高いです。まずは本当に電験三種に『合格する必要性があるのか』、『合格して何がしたいのか』など、モチベーションの根本を見つめ、勉強時間を十分に確保できるように生活を見直しましょう。
学習の重要ポイント
成功した勉強方法は人それぞれですが、失敗する資格試験勉強には共通点があります。これから電験三種合格を目指すために、以下のような勉強をしないように十分に注意してください。
- 復習しない
- 基礎を理解してから過去問に取り組む
- 動画視聴のみ
- SNSで勉強報告
■復習しない
復習を怠ると、せっかく覚えた知識が定着しません。電験三種は範囲が広いため、一度学んだ内容を繰り返し確認しないと、次第に知識が抜け落ちていきます。特に「理論」や「機械」では解法パターンの記憶が重要なので、間隔を空けた復習を繰り返す「エビングハウスの忘却曲線」に沿った学習が効果的です。忘れる前に復習することで、合格レベルの知識が身につきます。
「エビングハウスの忘却曲線」とは、心理学者ヘルマン・エビングハウスが提唱し、学習後20分で約40%、1時間後に約50%、1日後には約70%の内容を忘れるというものです。つまり、記憶は復習しないと急速に失われることを意味しています。逆に、学習した内容を時間をあけて繰り返し復習することで、記憶の定着率が大きく向上するとされています。効率的な学習には、この理論に基づき、1日後、3日後、1週間後とだんだん間隔を空けながら復習をすることが重要です。
■ 基礎を理解してから過去問に取り組む
一見すると、正攻法のような気がしますが、「まずは基礎から」と構えすぎると、いつまでも過去問に進めず非効率です。特に、初学者にとってテキストに書かれることは、どれも「重要」に見えてしまいます。何を覚えるべきかが絞り切れず、無駄な学習になってしまうことがあります。
実は、電験三種の出題傾向はある程度パターン化されており、過去問を先に見ることで、重要ポイントが自然と理解できるようになります。完璧主義で「基礎(と初学者が勘違いしている事項)」に固執すると、実践力が育たず、不合格になってしまうのです。1年間という期間で絶対に合格するためには、不要な勉強を徹底的にそぎ落とさなければなりません。
■ 動画視聴のみ
動画は理解を助ける良い教材ですが、「視聴」だけでは知識が定着しません。電験三種は計算力や読解力も問われるため、自分自身で実際に手を動かして、アウトプットすることが必要です。動画視聴はあくまで補助教材として活用し、自分の手で問題を解く、ノートにまとめるなどの能動的学習を取り入れないと合格には届きません。受け身学習に偏るのは非常に危険です。
■ SNSで勉強報告
SNSでの報告はモチベーション維持に役立つ反面、「投稿」すること自体が目的化しがちです。結果として「勉強した気」になって満足してしまい、実際の学習量や理解度が伴わないことがあります。また、他人と比較して焦ったり、ついついSNSを見る時間が増加してしまったり、自分の勉強ペースを乱す原因にもなります。SNSは利用するとしても、勉強時間を日頃支えてくれている家族や仲間に報告するような形がおすすめです。リアルな励ましの言葉がもらえたり、サボりにくい状況へ自分を追い込んだりできます。
学習がつまずいたときの対処法
独学で勉強を始めたばかりの人ほど、途中で「続かない」「難しすぎる」と感じがちです。そこで、つまずきやすいポイントとその対処法も確認しておきましょう。
① 理論科目の初期で挫折する
多くの受験者がまず手を付ける「理論」は、電験三種の基盤となる重要な科目です。しかし、物理法則や数学的思考を求められるため、中学生や高校生の頃に、数学や物理が得意でなかった人は、最初の段階でつまずきやすく、最後まで鬼門となってしまう傾向があります。
対策:
理論科目では、まず「理解しようとしすぎない」ことも一つの戦略です。完璧に理解しようとすると、先に進めなくなってしまいます。基本公式や解法パターンを暗記ベースで一通りこなし、後から仕組みを補強していくやり方が有効です。
② 計算問題が苦手で手が止まる
電験三種は、計算問題の比率が高く、苦手意識の原因になりがちです。特に中学生や高校生の頃に、数学に苦手意識があった人は、式を見ただけで拒否反応を示してしまうこともあるでしょう。かく言う私、T係長も文系出身でしたから、同じように悩みました。
対策:
まずは四則演算と方程式の計算の力を身につけましょう。中学校3年生が使用するような問題集で、計算分野を徹底的に学び直しましょう。計算が苦手な人ほど「手を動かす」ことを意識してください。最初は公式の丸暗記でOKです。何度も類題を解くことで「解く」力がつきます。その後、公式の導き方などより深い理解に移行すれば良いのです(電験三種であれば、丸暗記だけでも十分です)。解いた手順をノートに残しておき、復習時にそれを見直すことで、定着度も上がります。
裏紙などに走り書きで計算をメモして、特に見返さない人も多いですが、勉強としてはNGの方法です。必ず自分のやったことを見直し、「どこで計算ミスしたか」を分析できるようにしましょう。ミスの傾向が見えてきます。
私の場合、姪っ子の数学の宿題を見てあげるという名目もあり、計算の学び直しを行えたことも、合格に大きく寄与したように思います。この機会にお子さんの勉強を見ながら自分自身の勉強にもプラスにしてしまいたいですね。
③ モチベーションが続かない
ここが一番大きな問題になります。最初はやる気満々でも、数週間でやる気が落ちてしまうのもよくある悩みです。電験三種は範囲も広く、なかなか勉強した成果が見えにくいので、モチベーションの維持が大きな課題となります。私の周りでも、勉強を始めた10人のうち、2カ月勉強を続けられたのは2人だけでした。
対策:
日々の学習を「習慣」に変えることが鍵です。毎日決まった時間に勉強する、勉強記録をノートやアプリで可視化する、週ごと、月ごとの目標を小分けに設定することで、達成感を積み重ねる、などの方法が有効です。また、合格した後の収入や、働き方の変化、役職の変化、仕事内容の変化など、未来の姿をイメージすることも自分自身を奮い立たせるきっかけになります。
④ 法規の暗記に苦しむ
電験三種の法規は暗記要素が多く、理解よりも覚えることに重点が置かれます。そのため、なかなか頭に入らず後回しにされがちです。私、T係長も最後に「法規」を残した苦い経験があります。
対策:
法規は「一気に覚える」のではなく、「何度も見て覚える」ことが大切です。短時間で回数を重ねて記憶を定着させましょう。最近では便利なアプリも登場しています。アプリを用いて、頻出の条文や数値を重点的に覚えることで、点数を稼ぎやすくなります。苦手が一気に得意科目になります。
今後の学習に向けてのメッセージ
電験三種の勉強は、一見すると大変そうに思えるかもしれません。しかし、戦略を持ち、日々コツコツと学習を積み上げれば、合格は決して不可能なものではなくなります。家庭や仕事で忙しい社会人にとっては、効率的な学習がすべての鍵を握ります。これから勉強を始める方であれば、本記事の注意事項をよく頭に入れておきましょう。これまで何度も調整している方であれば、本記事をきっかけに今の学習を改善していきましょう。
電験三種を取得し、輝かしい未来をつかみ取りましょう!

