電気設備設計の鍵は「電圧降下」にあり!ミスをなくすケーブル選定の秘訣

電気設備設計の鍵「電圧降下」!ケーブル選定の秘訣 受変電

はじめに:そもそも「電圧降下」って何?

電気設備を設計する際、避けて通れない課題の一つが「電圧降下」です。これは電流がケーブルを流れる際に電圧が下がってしまう現象を指します。もしこの電圧降下を無視して設計を進めてしまうと、設備の性能が十分に発揮されなかったり、最悪の場合、故障の原因となったりするリスクを抱えることになります。この現象は特に、ケーブル敷設距離が長くなるほど顕著に現れるため、適切な知識と対策が不可欠です。この記事では、電気のプロの視点から電圧降下のメカニズム、計算方法、そして正しいケーブルの選び方を分かりやすく解説します。

どうして電圧降下が発生するのか?

電圧降下とは、送電線やケーブルの電気抵抗によって電圧が下がってしまう現象のことです。この現象は電流が流れる全ての回路で発生し、電線が長くなったり、流れる電流が大きくなったりするほど、その影響が大きくなります。

例えば、家の奥にあるコンセントに繋いだ掃除機やドライヤーのパワーが弱く感じられることがあるでしょう。これは、電源からコンセントまでの配線で電圧降下が発生し、機器に十分な電圧が供給されていないことが一因です。電圧降下を放置すると、モータの出力低下や照明のちらつき、機器の誤動作など様々な問題を引き起こす可能性があります。

この問題は、単に「電気が弱くなった」で済む話ではありません。特に、私たちがかかわる精密な制御が必要な機器やモータを多用するプラント設備では、電圧の安定性が重要な要素となります。PCなどの電子機器は定格の10%の電圧低下で停止しますので、絶対に許容電圧を超える電圧降下は避けなければなりません。電気設備の設計段階で電圧降下を適切に計算し、対策を講じることがプロの仕事なのです。この記事を読めば、皆さんも電圧降下の重要性を理解し、安全で信頼性の高い電気設備を設計するための第一歩を踏み出せるでしょう。

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電線を選定する2つの必須条件:電圧降下と許容電流

電気ケーブルを選定する際には、**「電圧降下」「許容電流」**という2つの重要な要素を考慮する必要があります。どちらか一方を無視して選定を進めてしまうと、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。まず、許容電流とは、そのケーブルが安全に流すことのできる最大電流値のことです。ケーブルに許容電流を超える電流が流れると、発熱してケーブルが溶けたり、火災の原因になったりする危険性があります。そのため、電線のサイズは使用する機器の電流値に基づいて、許容電流が十分あるものを選ばなければなりません。

次に、本題である電圧降下です。いくら許容電流に余裕があっても、電圧降下が大きすぎると機器は正常に動作しません。例えば、許容電流を満たすために細いケーブルを選んでしまうと、電圧降下は大きくなり、機器は定格電圧を得られずに性能を落としてしまいます。つまり、電気設備を安全かつ確実に稼働させるためには、許容電流を満たすことはもちろんのこと、電圧降下を許容範囲内に抑えるようにケーブルのサイズを決定することが不可欠なのです。この2つの条件をバランス良く満たすことが、電気工事におけるプロの判断と言えるでしょう。


【内線規程】で見る!許容電圧降下の基準とは?

電気設備の設計・施工においては、内線規程という法律的な基準を遵守することが求められます。この規程には、電圧降下に関する許容値が明確に定められています。具体的には、引込口から末端の機器までの電圧降下を、使用する電圧の何%以内に収めるべきかが規定されています。この基準を守らなければ、設備の性能が保証されないだけでなく、法的な問題に発展する可能性もあります。

内線規程の示す許容電圧降下は、一般的に低圧電路では2%以内とされています(その他は下記表による)。そのため、設計の際には常に内線規程を参照し、その基準をクリアしているかを確認することが不可欠です。

末端負荷迄のこう長電圧降下
電気使用場所内に設けた変圧器から供給する場合電気事業者から低圧で電気の供給をうけている場合
60m 以下幹線:3%
分岐:2%
幹線:2%
分岐:2%
60m 超~
120m 以下
5%4%
120m 超~
200m 以下
6%5%
200m 超~7%6%
内線規程による

誰でもできる!電圧降下を「計算」する3つのステップ

電圧降下の計算は難しそうに感じるかもしれませんが、基本を押さえれば誰でも簡単に計算できます。以下に、電圧降下を求めるための3つのステップを解説します。

  1. ステップ1:電圧降下の公式を理解
    電圧降下の計算には、いくつかの公式がありますが、基本となるのは以下の式です。 \( V_d​ = I \times Z \) \( V_d \) ​は電圧降下、Iは電流、Zはケーブルのインピーダンスです。このインピーダンスZは、抵抗RとリアクタンスXから構成されており、単相と三相で計算方法が少し異なります。抵抗は電流の流れを妨げる成分、リアクタンスは交流で生じる電気的な抵抗成分です。複雑な式に戸惑う必要はありません。まずは、電流とケーブルの特性が電圧降下を左右するという基本を理解しましょう。
  2. ステップ2:必要な数値を調査
    計算に必要な数値は、主に3つです。これらの数値を正確に把握することが、正確な計算の第一歩となります。特に、電流値は安全率を考慮して定格電流より少し大きめに設定することもプロのテクニックの一つです。
    • 電流(I):使用する機器の定格電流。
    • ケーブル長(L):ケーブルの長さ。
    • 力率(cosθ):電流と電圧の位相差を表す値。機器の仕様書に記載されています。不明な場合には 80% としておきましょう。
  3. ステップ3:単相と三相の計算方法の違い 電圧降下の計算式は、単相と三相で異なります。RとXは、それぞれケーブルの種類とサイズによって決まる抵抗・リアクタンス値です。これらの値は、内線規程やケーブルメーカーの技術資料で確認できます。
    • 単相2線式: \( V_d​ = 2 \times I \times L \times (R \cos \theta + X \sin \theta)/1000 \)
    • 単相3線式: \( V_d ​= I \times L \times (R \cos \theta +X \sin \theta )/1000 \) ※平衡負荷の場合
    • 三相3線式: \( V_d ​= \sqrt{3} \times I \times L \times (R \cos \theta +X \sin \theta )/1000 \)
公称断面積 (mm2)交流導体抵抗 R (90∘C) (Ω/km)50Hz60Hz
リアクタンス X (Ω/km)インピーダンス Z (Ω/km)
141.710.1281.71
221.080.1191.09
380.6260.1090.636
600.3970.1010.410
1000.2390.09350.257
1500.1590.08850.182
2000.1200.08760.149
2500.09810.08520.130
3250.07640.08250.112
【参考】6600V CV及びEM 6600V CE/F 住電HSTケーブルより引用
公称断面積 (mm2)交流導体抵抗 R (90∘C) (Ω/km)50Hz60Hz
リアクタンス X (Ω/km)インピーダンス Z (Ω/km)
221.080.1351.09
380.6260.1240.638
600.3970.1150.413
1000.2390.1070.262
1500.1590.1020.189
2000.1200.1000.156
2500.09770.09750.138
3250.07590.09410.121
4000.06270.09160.111
5000.05130.08950.103
6000.04400.08920.0995
【参考】6600V CVT及びEM 6600V CET/F 住電HSTケーブルより引用

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もう悩まない!具体的な「ケーブル選定」方法

電圧降下の計算が完了したら、いよいよ具体的なケーブル選定に入ります。計算結果と内線規程の基準を照らし合わせながら、最適なケーブルサイズを決定します。

  1. 計算結果から最適なケーブルサイズを選定
    電圧降下の計算で得られた値が、内線規程の定める許容値を超えていないかを確認します。もし計算結果が許容値を超えていた場合は、ケーブルのサイズを一つ大きいものに変更して再計算を行います。基本的にはエクセル管理しているので、自動計算で作業はすぐ終わります。
  2. ケーブル許容電流を確認
    ケーブルメーカの技術資料には、ケーブルの種類やサイズごとの抵抗値、許容電流が先ほどの用に一覧表になっています。そういった表を参考に、計算結果をクリアするケーブルサイズを選び出します。許容電流と電圧降下の両方を満たすケーブルサイズが複数ある場合は、コストや施工性を考慮して最適なものを選ぶのがプロの判断です。

電気工事のプロが語る!現場でよくある配線ミスとその解決策3選

電気工事の現場では、計画段階での小さな見落としが後で大きな問題に発展することがよくあります。特に、ケーブルの選定やルートの確保は、現場の進行を左右する重要なポイントです。今回は、T係長が実際に直面した、2つのミスを紹介します。

ミス1:電圧降下を気にしすぎてケーブルが太くなりすぎた!

電圧降下の計算は、ケーブル選定の基本です。しかし、安全マージンを取りすぎて必要以上に太いケーブルを選んでいました。ある現場では、計算上は 8sq で十分なところを、安全を考慮して 14sq のケーブルを選定しました。しかし、実際に配線してみると、接続先の端子台が 8sq までのケーブルしか受け入れられない仕様でした。結果として、ケーブルを端子台に接続できず、作業が中断してしまいました。

このようなミスを防ぐためには、事前に接続先の端子台の仕様を確認することが不可欠です。この時は、緊急で 14sq を接続できる端子台を設け、既設の端子台へ細い配線でつなぎました。距離が短くなれば電圧降下も小さくなることを利用した苦肉の策でした。不格好ですが、設備停止期間が長くなるよりはずっとマシです。


ミス2:ケーブルの太さがルート変更を余儀なくした!

ケーブルが想定より太くなると、既存の配管やケーブルラックでは物理的に収まらなくなることがあります。既設の設備増設工事で、電圧降下の計算からケーブルを太くする必要がありました。しかし、既存の配管やケーブルラックが細く、新しい太いケーブルが通らない事態に直面しました。この時は、新しい配管ルートを確保するために壁に穴を開け、ルートを新規に確保するといった大掛かりな工事が必要となり、余計なコストと時間がかかってしまいました。

このようなミスを回避するには、事前に入念な現場調査を行うことが最も重要です。既存の配管やラックのサイズ、曲がり具合、ケーブルの充填率などを現場で詳細にチェックしましょう。そして、ケーブル選定とルート設計を同時に進めることで、太さに見合ったルートを確保できます。


まとめ:正しい知識で安全な電気設備を

電気設備を安全かつ確実に動かすためには、**「電圧降下」**の理解が欠かせません。電圧降下とは、電線に電流が流れる際に電圧が下がってしまう現象で、この影響は配線が長くなるほど大きくなります。電圧降下を無視すると、機器の性能低下や故障につながるため、内線規程で許容値が厳しく定められています。

ケーブルを選定する際は、電圧降下と許容電流の2つの条件をバランス良く満たすことが重要です。許容電流だけを考慮して細いケーブルを選ぶと電圧降下が大きくなり、逆に電圧降下を気にしすぎて太くしすぎると、接続先の端子台に合わなかったり、既存の配線ルートに通らなかったりといった現場でのトラブルを引き起こす可能性があります。この記事で解説した知識とポイントを押さえることで、安全で信頼性の高い電気設備を設計し、現場での予期せぬトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。

この記事を書いた人
T係長

30歳で制御設計の世界に飛び込み、未経験から10年以上にわたり、プラント設備の制御設計・更新・改造案件に携わってきました。これまで100件を超える現場経験を通じて、設計図面から制御盤、シーケンス制御、保護協調まで幅広い電気技術を磨いてきました。
保有資格は「第二種・第三種電気主任技術者」「第二種電気工事士」「基本情報技術者」。資格の枠にとらわれず、現場で困っている人を助けられる技術者であることを大切にしています。
このブログ「誠電気設計」では、初心者や若手エンジニアの方にもわかりやすく、実務に役立つ知識を共有しています。学びを通じて、読者とともに成長し続けることを目指しています。

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