はじめに:零相電圧検出装置と現場での重要性
高圧受電設備において最も恐れられる事故の一つが地絡事故です。地絡時は接地を経由して大きな電流が流れ、設備損傷や感電リスクを伴います。特にSOG動作での事故は他の需要家設備へも大きく影響するため、高圧需要家側での迅速な検出と事故箇所の切り離しが不可欠となります。そのために使用されるのが零相電圧検出装置、いわゆるZPDです。
ZPDは地絡方向継電器や地絡過電圧継電器に必要な信号を提供します。地絡を検知し、遮断器を動作させることで被害の拡大を防ぐ重要な役割を担っています。特に高圧需要家側に設置されるZPDは、安定した動作が求められます。地絡の検出精度や誤動作防止は、電気主任技術者にとって重要な管理項目です。
それほど重要な機器にも関わらず、現場ではZPDの配線や点検が十分に理解されていない場合もあります。誤配線やヒューズ切れによって動作しないまま放置されると、実際の地絡事故時に保護が働かず重大な障害へ発展する可能性があります。本記事ではZPDの基礎(EVTとの違い)から、設置時の注意事項から現場のトラブル事例まで、実務者目線で解説します。
ZPDとEVTの違いを理解する
ZPD(Zero-phase Potential Device)は 250pF x3 のコンデンサを用いて、零相電圧を取り出す装置です。ZPDはコンデンサで分圧した電圧を小型変圧器で取り出す方式です。これにより三相の不平衡や地絡による零相電圧を安定して検出できます。接続は下図のようになります。

一方で電験の試験勉強などでよく出会うのは、EVT(接地形計器用変圧器)です。こちらは主に電力会社の配電用変電所で使用されます。T係長は電力会社側の設備に関わることはありませんが、大きいプラントで特高受変電設備を有していたり、昔ながらの3.3kV系統が存在したりする場合の非接地系にEVTが設置されています。こちらは下図のように変圧器の原理を用いることで、零相電流を流し、地絡を検出します。

両者は似た目的を持ちますが、その構造や原理、設置個に違いがあるため混同しやすい点に注意が必要です。高圧需要家の受電設備では一般的にZPDが用いられます。EVTは配電用変電所向けや特高受受変電設備や3.3kVの非接地系です。同一系統で複数のEVTを系統内に設置してしまうと、地絡電流が正しく流れなくなる不具合が生じますので、EVTは非接地系統の高圧需要家には設置することができません。 EVTの詳細については後日別記事で解説します。
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地絡方向継電器との接続ポイント
ZPDはコンデンサ単体で保護を行うわけではなく、地絡方向継電器(DGR)や零相変流器(ZCT)等と組み合わせて使用されます。ZPDから取り出した零相電圧と零相電流を入力信号として与え、DGRが地絡の有無や方向を判定します。この接続が正しく行われていないと、誤動作や不動作が発生します。
配線上の注意点として、ZPDの出力は必ずDGRの専用入力端子へ接続することが基本です。また接地線の取り回しを誤ると零相電圧が正しく伝わらず、動作判定が狂う恐れがあります。特に多点接地は誤差を生じやすく、不要動作の大きな原因となります。
さらに50m以上と配線距離が長い場合、導体抵抗やノイズの影響で検出精度が低下することがあります。原則的にシールド線による配線を行ったり、盤レイアウト設計時にはDGRとZPDを極力近接配置して配線経路を短く確保したりすることが望ましいです。また、現場での施工チェックや耐圧試験も合わせて行うことが、信頼性確保に直結します。
接続時に起こりやすいトラブルと実体験
高圧ケーブルのシールド処理を誤ったケース
高圧シールドケーブルを原則的には片側接地することは良く知られたことです。しかし、ケーブル亘長が100mを超える場合などは両端接地することもあります。この時、シールドの処理方法を誤り、地絡が検出できない事例が後を絶ちません。
T係長は、3カ月目ぐらいの現場でこれを経験しました。いつものようにシールドが高圧盤側で接地していることを確認して、「ヨシッ!」しましたが、電源を入れたら地絡発生。大慌てで確認作業が始まりました。この時、下図のように負荷側でも接地をしたことで、閉回路が構成されてしまい、地絡電流が流れたと誤検知してしまいました。

両端接地で、高圧ケーブル側の地絡を検出したい場合、ZCTの KからL へ貫通させた後に設置するのが正しい施工方法です。ZCTを貫通させることで、通常遮へい層に流れる地絡電流 Ig を相殺できます。接地個所以外で地絡が起きると、ZCTは電流差を検出します。

k端子とl端子の極性を誤ったケース
これもT係長が実際に経験した事例です。ある更新工事の現場で、「k」と「l」を地絡方向継電器に接続する際、誤って極性を逆に接続してしまった事例に出会いました。試験時には零相電圧が思うように入力されず、リレーが異常に敏感に反応したり、逆に動作しないことが繰り返し起きました。最初は機器の不良を疑いましたが、最終的に配線図と現場端子を突き合わせたところ、kとlの誤接続が原因だと判明しました。
また別の需要家さんでは、試験が正しく行われず、運用が行われていました。そんな中で、突如、あるフィーダが地絡検出で遮断されました。どれだけ調べても地絡の箇所はありませんでした。丸一日現場をかけずりまわり、工事履歴を辿って、やっと「誤配線」という結果ににたどり着きました。健全フィーダが誤動作で遮断されてしまったというのが、事実でした。エンボス加工になっているので、暗い盤内では見辛いかもしれませんが、しっかりと確認しましょう。

ZCT(零相変流器)のK端子を必ず電源側に、L端子を負荷側に接続するという取扱説明書の指示内容を徹底することが重要です。二次側のk端子とl端子の接続も同様です。また、配線完了後の試験を厳格に行い、位相角が正しいことを確認する必要があります。必ず作業と試験は別の人や部署で行い、確実性を高めなければならないという良い経験でした。
ヒューズ取付忘れトラブル事例
電気設備の仕事をしていると、「ZPD(零相電圧検出装置)の一次側にヒューズがついてるんだけど、これって何のため?」と疑問に思うことがありますよね。一見すると、余計な部品が増えるように思えますが、実はこのヒューズは試験時の安全確保とメンテナンスの簡便化という、非常に重要な役割を担っています。
ZPDは、常に高圧の配電線に接続されています。そのため、定期的な点検や特性試験を行う際には、感電や短絡といったリスクが伴います。ここでヒューズが大活躍します。試験前にヒューズを抜くことで、ZPDを配電線から物理的に切り離すことができます。これにより、活線状態での作業を回避でき、作業者の安全を確保しながら、より安心して試験を進めることができます。高圧の活線作業は大変に危険なので、絶対に避けるべきです、、、しかし現実には。
しかし、この設計を採用したことで、ヒューズを戻し忘れる事例も必然的に発生します。ある小さな受配電設備では、点検で初めて行った際にヒューズが抜けた状態でした。地絡過電圧を検知できていませんでした。もちろん地絡継電器は動作しません。しっかりと手順書と作業前写真と作業後写真の撮影を徹底しなければなりません。
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代表的なZPDメーカと特徴・組み合わせる継電器
光商工
光商工は「ZPC型 零相電圧検出用コンデンサ」で知られるメーカです。「ZPDと言えば光商工」と言える代表メーカです。碍子形の構造を採用しており、シンプルかつ堅牢な設計が特徴です。また、高調波に対しても強いのが魅力です。高調波対策がされていない機器を選定すると、再エネ接続が増えている昨今、意外と不要動作する場合もあります。ちなみに、ZPC が製品名ですので、現場でもZPDではなく、ZPCと単に呼ばれることも多いです。
LDGシリーズ(地絡方向継電器)とLVGシリーズ(地絡過電圧継電器)です。組み合わせを誤ると正しい地絡検出が出来なくなりますので、注意しましょう。カタログを見て、確認してください。特に既設の設備との組み合わせには注意が必要です。T係長も、MNラインの出力が、古いアナログ波形のものと、新型パルス波形の組み合わせで使用してしまい、トラブルとなった苦い経験があります。
三菱電機
三菱電機は高圧受電設備で定評のあるメーカーで、ZPDの代表機種として MPD-3 零相電圧検出器 が知られています。この装置は内部にコンデンサと検出トランスを組み込み、安定した零相電圧検出を実現しています。組み合わせる継電器としては、同社の MDGシリーズ 地絡方向継電器 です。ZPD出力を直接入力できる設計で、同一メーカー同士の接続により信頼性を高められます。
常時監視機能や周波数誤り検出機能などの高度な自己診断機能があることも特徴です。加えて、リレー動作時の入力値を記録・表示する事故記録機能を搭載しているので、事故後の検証にも非常に有用です。
オムロン
オムロンは計測・制御機器で有名ですが、電力保護分野でも「VOC-1MS2 零相電圧検出装置」を提供しています。小型で取り付けやすく、比較的省スペースな設計が特徴です。対応する継電器としては、同社の K2GVシリーズ 地絡過電圧継電器 と K2GSシリーズ 地絡方向継電器 です。オムロン製は「省スペース」と「コストバランス」が大きな魅力で、小規模設備や更新需要に適しています。
泰和電気工業
泰和電気工業は制御機器メーカーとして長い実績を持ち、ZPDを「零相基準入力装置」としてラインナップしています。泰和の製品は、操作性や点検性を考慮した設計で、盤メーカからの評価も高いです。組み合わせる継電器としては、同社の SHGシリーズ 地絡方向継電器 が推奨されます。盤メーカが泰和機器で統一するケースも多く、保守のしやすさが魅力です。特徴は「国内需要家向けの実績」と「アフターサポート」であり、長期安定運用を重視する現場に適しています。
現場で役立つトラブル防止のチェックリスト
ZPDとEVTを混同しないため、設置前に使用目的を明確化することが重要です。高圧需要家設備では原則、必ずZPDを採用します。EVTは配電所用途などの非接地系に限定されます。単線結線図作成の段階でこの点を確認しておくことで、誤った機器選定を防げます。
次に地絡方向継電器との接続では、配線図通りに確実に施工されているかを確認します。接地線の接続方法や多点接地の有無を現場でチェックし、施工不良を排除することが不可欠です。配線距離が長すぎないかどうかも確認項目に含めるべきです。
最後にヒューズ切れ対策です。定期点検の際に必ず導通試験を実施し、必要に応じて予防交換を行います。さらに停電作業の際にはZPDの動作確認試験を合わせて実施すれば、地絡保護機能の信頼性を高めることができます。
- 設備規模に応じて ZPDかEVTかを正しく選定
- 継電器はメーカー推奨型式で選び、互換性を確認
- k端子・l端子の極性を必ず確認し、方向試験で最終確認
- 接地線は一点接地を徹底
- ヒューズやコンデンサの点検を定期実施
- 誤動作履歴を整理し、原因を必ずレビュー
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まとめ:ZPDを正しく理解し、安全な設備運用へ
ZPDは高圧受電設備における地絡保護の要であり、その正しい理解が事故防止に直結します。EVTとの違いを認識し、適材適所での活用を行うことがまず重要です。設置現場では誤配線や多点接地を避け、確実な接続が求められます。定期的な導通試験と動作確認により、万一の不具合を早期に発見することが可能です。これらを怠ると、地絡事故時に保護動作が行われず重大事故へつながります。
電気主任技術者や保全担当者は、ZPDの構造や特徴を理解し、現場での点検と運用に活かすことが求められます。本記事で解説した違いと接続ポイント、そしてトラブル防止策を踏まえ、より安全で安定した設備運用を実現しましょう!

