クローズド・スター・デルタ始動:スムーズな切り替えで大容量モータを動かそう

クローズド・スター・デルタ始動【適応負荷は?】 機械制御

はじめに:なぜスムーズな切り替えが必要なのか?

モータを始動させる際、始動電流を抑制するためにオープン・スター・デルタ始動が広く用いられています。しかし、通常のオープン・スター・デルタ始動では、スター結線からデルタ結線に切り替える際に、一瞬だけモーターと電源が切り離される瞬断が発生します。この瞬断は、小容量モーターでは大きな問題になりませんが、大容量モータでは始動が不安定になったり、突入電流が再度発生したりする原因となります。特に、慣性力が大きい大容量負荷では、モータが規定の回転数に達する前に停止してしまうリスクも生じます。

オープン・スター・デルタ始動はどんな負荷に適している?
はじめに:モータ始動方式の基本モータを動かすとき、いきなり全電圧をかけると、非常に大きな電流が流れます。この電流は「始動電流」と呼ばれ、定格運転時の6〜7倍にも達することがあります。近年は省エネへの要請からトップランナモータを使用することが...

この問題を解決するために、クローズド・スター・デルタ始動が開発されました。クローズド・スター・デルタ始動は、瞬断によるデメリットを解消し、大容量モータをより確実に、そしてスムーズに始動させるための始動方式です。始動電流による電源系統への悪影響もないため、非常用発電機を小容量化できるなどのメリットもある有用な始動方式です。本記事では、クローズド・スター・デルタ始動の基本回路、その仕組み、選定のポイントを、実務に即して解説します。


クローズド・スター・デルタ始動とは?回路図で確認!

クローズド・スター・デルタ始動は、スター結線からデルタ結線への切り替え時に、電源をモーターから切り離さない(クローズド)ことが最大の特徴です。この方式を実現するために、切り替え時に抵抗を一時的に挿入します。スター結線で始動し、モーターの回転数が上がった後、まず抵抗を介して瞬断を避け、デルタ結線に切り替えます。この一連の動作により、始動から定格運転への移行が途切れることなく、スムーズに行われます。

6,88のMCがON
6と88のMCがONします。
6のMCがOFF,19のMCがON(切替中)
6のMCがOFF,19のMCがON(切替中)
42のMCONし、通常運転へ。
42のMCがONし、通常運転に切り替わります。

このクローズド方式では、オープン方式のような瞬断が起こらないため、切り替え時の過大な突入電流やトルク変動を抑えることができます。特に、高慣性負荷や大容量のポンプ、ファンなど、安定した始動が求められる設備に最適です。回路はオープン方式に比べて少し複雑になりますが、モータや周辺機器への負担を大幅に軽減できるメリットがあります。

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【核心】クローズド・スター・デルタ始動が適応する「負荷」とは?

クローズド・スター・デルタ始動が最も適しているのは、始動時に大きな慣性力や抵抗を伴う大容量負荷です。200Vで45kW以上、400Vなら95kW以上が目安の一つでしょうか。例えば、大型の破砕機、コンベア、圧縮機、そして昇降機など、始動に高いトルクが必要とされる機器が挙げられます。これらの負荷は、始動中に少しでもトルクが変動すると、スムーズな加速が妨げられ、最悪の場合、始動失敗につながる可能性があります。クローズド方式は、切り替え時のトルク変動を最小限に抑えることで、これらの問題を防ぎます。

また、クローズド・スター・デルタ始動は、頻繁な始動・停止を繰り返す用途にも向いています。切り替え時の電気的・機械的ストレスが少ないため、モータや開閉器の寿命を延ばす効果も期待できます。電源系統や他設備への始動電流による電圧降下に依るの悪影響も避けることができるなど、多数のメリットがあります。


クローズド・スター・デルタ始動の具体的なメリットと注意点

クローズド・スター・デルタ始動の最大のメリットは、スムーズな切り替えによる安定した始動です。これにより、ブレーカーの誤作動やモーターの焼損リスクを低減できます。特に、電源系統の容量に余裕がない場合でも、安定した始動が可能です。また、切り替え時の機械的なショックが少ないため、減速機や軸受などの機械部品への負担も軽減されます。

一方で、注意すべき点もあります。回路がオープン方式に比べて複雑になります。オープン方式なら MCx3個 が必要なだけですが、クローズド方式では MCx4、抵抗3個以上 が必要になります。切替回路も複雑になる上、それらを設置するスペースも増加します。そもそも、大容量モータの場合には必要な遮断器やコンタクタも大きくなりますので、結果として、制御盤のサイズが大きくなり、導入コストも高くなります。

また、切り替えに使う抵抗器の発熱も考慮する必要があります。抵抗器が通電している時間はほんの一瞬(通常2秒)なのですが、その間にキンキンに熱くなります。素手で触ることは絶対に不可能です。T係長も最初は信じられませんでしたが、2秒足らずで、キンキンになっていました。そのため、周囲に密着して他の機器を設置することはできません。カタログ記載の離隔距離が必要です。

上記に関連して、抵抗器は必ず大電力用を用いなければなりません。消費電力が小さい抵抗器を選んでしまうと、切り替え時の通電によって燃えてしまいます。以下が参考になるでしょう。

定格電圧 [V]モータ容量 [kW]1相あたりの抵抗器
容量 [W]
抵抗値 [Ω]
200/2205.5603.4
7.5603.4
111001.7
151001.7
18.51001.2
221001.2
302500.7
372500.7
453500.5
553500.5
753500.36
903500.36
400/4407.56014
11607
15607
18.51003.8
221003.8
301003.8
372502.4
452502.4
553501.5
753501.5
903501
1103501
1327000.72
【参考】クローズド・スター・デルタ始動 抵抗器

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まとめ:あなたのモータに最適な始動方式を見つけよう

クローズド・スター・デルタ始動は、オープン・スター・デルタ方式が抱える瞬断という課題を解決する、より高度な始動方式です。大容量モータや重負荷を扱う現場では、この方式を検討することで、設備の信頼性や安全性を飛躍的に高めることができます。ただし、そのメリットを最大限に活かすためには、初期コストや設置スペースなどの注意点も十分に理解しておく必要があります。

あなたのモータに最適な始動方式を選ぶ際は、単に電流を抑えるだけでなく、負荷の種類、モーターの特性、そして現場の条件を総合的に考慮することが最も重要です。オープン・スター・デルタ始動に関して知りたい方は下記をご覧ください。

オープン・スター・デルタ始動はどんな負荷に適している?
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この記事を書いた人
T係長

30歳で制御設計の世界に飛び込み、未経験から10年以上にわたり、プラント設備の制御設計・更新・改造案件に携わってきました。これまで100件を超える現場経験を通じて、設計図面から制御盤、シーケンス制御、保護協調まで幅広い電気技術を磨いてきました。
保有資格は「第二種・第三種電気主任技術者」「第二種電気工事士」「基本情報技術者」。資格の枠にとらわれず、現場で困っている人を助けられる技術者であることを大切にしています。
このブログ「誠電気設計」では、初心者や若手エンジニアの方にもわかりやすく、実務に役立つ知識を共有しています。学びを通じて、読者とともに成長し続けることを目指しています。

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