計装エンジニア必見!警報設定器におけるバーンアウトとヒステリシスの正しい理解と活用法

計装エンジニア必見 バーンアウトとヒステリシス 計装

はじめに:計装におけるバーンアウトの重要性と誤解

「バーンアウト」という言葉は、一般的には「燃え尽き症候群」を意味する心理学用語として知られています。しかし、計装や制御の分野では全く異なる意味を持ち、安全運転を支える重要な仕組みのことを表します。特にプラントの計装やPID制御において、バーンアウトはセンサ断線時の安全性を確保するための必須機能として導入されています。本記事では、計装分野におけるバーンアウトの正しい意味や役割を解説し、さらに禁止とする場合の考え方について詳しく整理します。


バーンアウトとは?計装での意味と役割

計装におけるバーンアウトとは、入力信号の断線や異常時に、変換器や調節計が出力を強制的に安全側へ振る機能を指します。例えば、次のような場合を考えて見ましょう。
・ボイラ制御は温度異常高をインターロック条件。
・ボイラ温度は熱電対でDC4-20mAのアナログ回路。
熱電対が断線した場合には、DC0mAが入力されます。ここで、実際には温度が上昇したとしてもボイラを停止させる回路は動かないことになります。そこで、バーンアウト機能を用いて、出力電流をDC20mA付近に固定し、DCSや警報装置が異常を即座に検知できるようにします。このような、出力が大きくなる場合を「高バーンアウト」と呼ぶ人もいますが、一般的に我々の業界では、「バーンアウト」と言えば通じます。その理由は次の事例を考えれば明らかです。

・ポンプは取水井水位低をインターロック条件。
・取水ポンプ井水位に関するDC4-20mAのアナログ回路。
この場合、水位計が断線した場合には出力は0mAになりますので、水位低が検出されることになりますので、特段の対応は不要です。通常は「低バーンアウト」を用いるような場面が存在しないのです。後述しますが、敢えて用いる時もないわけではありません。

プロセスの種類に応じて適切な対処を選択しなければならず、誤った設定は逆に重大事故につながりかねません。そのため、バーンアウトは単なる機能ではなく、計装システムにおけるリスク低減の要となっています。

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PID制御におけるバーンアウトの機能

PID制御は、入力信号に基づいて測定対象の状態や値を安定させる重要な役割を担います。しかし、信号が断線した場合、ワンループコントローラやDCSなどの制御機器は正しい値を受け取れなくなり、制御動作に不安定もしくは異常をきたします。ここでバーンアウトが有効に働き、信号が失われた瞬間に出力を安全側に強制します。例えば、温度制御系では「断線=出力最大」とする設定により、加熱器がオフとなり過熱を防ぎます。一方、圧力制御などでは逆に「断線=出力最小」とする場合もあります。このように、PID制御の信頼性を維持するためには、バーンアウトの正しい理解と適切な設定が不可欠であり、制御安定性と安全性を両立する上で重要な役割を果たしています。


バーンアウトを禁止とする場合とその理由

一方で、すべての制御システムでバーンアウトが推奨されるわけではありません。オペレーションや機械保護の観点から、バーンアウトをあえて禁止とする場合があります。例えば、化学プラントやボイラ設備では、圧力制御が安全運転の要です。反応槽や蒸気ボイラの圧力を監視する圧力トランスミッタに低バーンアウトを設定した場合、センサ信号が0mAになるとDCSやPLCは「圧力異常」と認識し、緊急停止や安全弁を動作させます。

しかし、実際にはケーブルの接触不良や電磁ノイズで信号が一時的に0mAに飛ぶことがあります。この瞬断により、反応槽の加圧ポンプやボイラ給水ポンプ、蒸気ブローオフ弁などが誤動作で停止し、下流のライン圧力が急低下するケースが報告されています。その結果として、配管内でキャビテーションが発生したり、圧力低下による流量不安定で熱交換器や反応槽の機械が損傷したりする事故につながることもあります。このような場合を考慮して、安全性を他の仕組みに委ねる必要があり、リスクアセスメントを前提に慎重な設計が求められます。


アラームセッタ?PLC?

アラームセッタは、測定対象の値が設定値を超えた場合に警報を発するための機器です。エムジー製(旧エム・システム技研)の KS2□ は現場でもよく出会う機器です。KS2V2 はバーンアウト機能有りですが、KS2V3 はバーンアウト機能無しです。

また、PLC入力で警報を出そうとすると、PLCがダウンした際に重要な信号を検出できません。私たちが扱う重要なプラントにおいては、この問題を解決する為に、計装信号を上述のような警報設定器でハード検出することがままあります。「ハードの信頼性が一番高い」というのが根幹思想です。


補足:バーンアウトとバンプレスの違い

計装の現場では、バーンアウトとバンプレスが混同されることがあります。T係長自身も最初は勘違いしており、打合せで話がかみ合わず冷や汗をかいた苦い思い出があります。バーンアウトはセンサ断線時に出力を安全側に振る機能であり、入力信号の異常検出に関連しています。一方、バンプレスはPID調節計の自動・手動切替時に操作量をスムーズに引き継ぎ、急激な変動を防ぐための仕組みです。両者は全く異なる目的で設計されていますが、どちらも制御の安定性や安全性を支える重要な機能です。特に教育や現場の引き継ぎにおいては、この違いを明確に説明しておくことがトラブル防止のためには必須です。


計装システム設計での実務ポイント

警報設定器KS2V2におけるヒステリシスの注意点

そもそも「ヒステリシス」とは、これは設定値の上下に幅を持たせることで、出力が頻繁にON/OFFを繰り返さないようにする機能です。もしヒステリシスを適切に取らないと、プロセス値が境界付近で振動し、リレーが断続的に動作して接点摩耗や誤作動を引き起こす危険があります。特に電磁弁やモータの制御に接点を使用する場合、短時間の断続動作が機械的な損傷につながります。

エムジー製の警報設定器「KS2V2」は、アナログ信号を受けて上下限の警報を出力できる機器です。シンプルで使いやすい一方、「ヒステリシス幅」が通常はありません。プロセス信号によっては警報が安定せず、誤警報や不要な停止を招く恐れがあります。「ヒステリシス幅」とは簡単に言えば、検出設定値と復帰設定値の差のことです。

ある液体を貯留するタンクの液位を例に考えてみます。タンク液位が低になった場合にポンプを起動し、液体を受け入れる制御をするプラントの流れです。「KS2V2」のようなヒステリシス幅が無い場合、液位低検出後にポンプが動き出し、液位は上昇します。ここで、液位低は復帰(OFF)になるので、ポンプは停止します。これでは、またすぐに液位低となり、ポンプが運転します。ポンプが頻繁に起動、停止を繰り返してしまい、機械に負担がかかってしまいますので、現場としては絶対に避けたい運用です。

ヒステリシス幅があれば、液位低が復帰するところまである程度の幅を持たせることが出来ますので、上述のような不具合は回避することが可能です。もちろん、通常は液位低と液位高(復帰水位)を個別に検出して、液位低を保持するハード回路を構築するようなものが最も安全方向です。実際にこのように制御するプラントもありますが、制御盤内にリレーを置くスペースが必要になったり、コストダウンの要請があったりと置かれた状況によりけりであり、設計の悩みどころ、面白いところでもあります。

ヒステリシスを考慮できる機器の提案

近年は、警報設定器に加えてワンループコントローラを利用するケースが増えています。横河電機「UTAdvancedシリーズ」などは、単純な警報出力だけでなく、ヒステリシス幅を自由に設定でき、さらに断線検出やフェイルセーフ動作を細かく調整可能です。

特にワンループコントローラは、警報設定器に比べて接点チャタリングが起きにくく、長期的な信頼性に優れています。また、機種によってはバーンアウトの扱いも複数の選択肢を持ち、システム設計に合わせて安全側に倒す設定が可能です。

しかし、上記の機器はソフトの構築も必要になり、設定も難しいです。警報設定器から変更するには少しハードルが高いですね。そこで、オムロンの「M2AS1」が有効な選択肢です。出力は1点のみですが、ヒステリシス幅の調整が可能です。

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まとめ:バーンアウトの理解と禁止設定の判断が肝!

計装システムの設計において、警報設定器の選定や設定は単なる機器選びではなく、安全性と信頼性を左右する重要な要素です。特に「バーンアウト」機能は、断線時に安全側へ制御を誘導する仕組みとして不可欠であり、プラントの安定運転を守るために正しい理解と設定が求められます。また「ヒステリシス」は、警報や制御の不要なチャタリングを防止し、ポンプやモータの過剰なON/OFFによる機械的損傷を防ぐうえで欠かせません。

ヒステリシス幅が取れない警報設定器では、誤警報や設備の頻繁な起動・停止のリスクが高まります。ヒステリシス幅の調整が可能な警報設定器や、ワンループコントローラのようにバーンアウト設定と組み合わせて柔軟に制御できる機器を選ぶことで、より堅牢で安心な計装システムを構築できます。

結局のところ、計装エンジニアにとって大切なのは「機能を知識として理解するだけでなく、現場のプロセスに即した警報設定器を選ぶこと」です。バーンアウトとヒステリシスを正しく活用することが、不要な停止を防ぎ、プラントの安定稼働とリスク低減につながるのです。

この記事を書いた人
T係長

30歳で制御設計の世界に飛び込み、未経験から10年以上にわたり、プラント設備の制御設計・更新・改造案件に携わってきました。これまで100件を超える現場経験を通じて、設計図面から制御盤、シーケンス制御、保護協調まで幅広い電気技術を磨いてきました。
保有資格は「第二種・第三種電気主任技術者」「第二種電気工事士」「基本情報技術者」。資格の枠にとらわれず、現場で困っている人を助けられる技術者であることを大切にしています。
このブログ「誠電気設計」では、初心者や若手エンジニアの方にもわかりやすく、実務に役立つ知識を共有しています。学びを通じて、読者とともに成長し続けることを目指しています。

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